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今月の気になる本

2009年02月03日

『アイデアのちから』『脳と気持ちの整理術』

『アイデアのちから』

 チップ・ハース、ダン・ハース 著
飯岡美紀 訳 日経BP社発行

 ・単純明快である、・意外性がある、・具体的である、・信頼性がある、・感情に訴える、・物語性がある。
この6項目に即して、具体的なエピソードを紹介しながら、記憶に焼きつくアイデアを生み出す方法を提示したのが本書だ。
 一読した後、世の中でもてはやされている商品やCMのキャッチコピーなどを思い浮かべてみると、たしかに、本書の6項目のすべて、あるいはいくつかを満たしていることがわかる。
 各章に設けられた「アイデア・クリニック」というコラムは、例文を提示し、それを人の心により響くものに変えていくようなものにする趣向。表現力を鍛える格好のドリルとなっている。
 本紙、特に裏面になっている「舟入散歩」作成のヒントをもらえそうな気がして、思わず購入してしまった。

 

『脳と気持ちの整理術 意欲・実行・解決力を高める』 

 築山節 著 NHK出版 生活人新書

 個人的な感想だが、仕事力アップを目指した本は、どれも読んでいて疲れるような気がする。自分が最高だと思っているノウハウを伝授しようという姿勢で語ってくる著者とこちらの思考が戦ってしまうせいかもしれない。
 しかし、本書は、「脳」というものの特性を踏まえて、脳というものの力を引き出すためにはこうしたほうがいいよ、というおだやかなスタンスで書かれているせいか、アドバイスがすんなりと頭に入ってくる。まさに脳に優しい本。
 各章の終わりに、ポイントがまとめられているのもありがたい。「できることが増えると好きになる」、「五歩先に解決がある問題の一歩目をまず見つけよう」というように。
 本書を読んだら、悩むより、とりあえずしっかり寝て頭を休めよう、とわりきれるようになった。

(哉)

2009年01月05日

『印刷物の考現学』『編集者!』

『印刷物の考現学』

 田中正明 著 オフィスリテロ 発行

 ポスター、カタログ、切符、切手、カレンダー、絵はがき…etc.世の中はさまざまな印刷物であふれかえっている。本書は、【1976年~1981年】と【1996年~2000年】の2期にわたって、「印刷雑誌」という雑誌に毎月掲載されたエッセイをまとめたもの。デザイナーである著者が、気になる印刷物を取り上げ、その印刷物の風合いを社会的考察をまじえながら述べている。著者の海外行きをはさんで2部に分かれているが、後半では印刷のデジタル化が大幅に進んでいる様子がわかる。
 「テレカ・デザイン学というものを(中略)じっくりと考えてみるべきものと思っている」と現在では懐かしいものになってしまったテレホンカードについて書かれているのも興味深い。
 地域の広報誌など地味な印刷物にも目を向けられているのがうれしい。この「インフォメーション」も今の世の中に現れた「印刷物」の一つ、真摯に取り組まなくてはと、あらためて思った。

 

『編集者!』 

 花田紀凱 著 ワック株式会社 発行

 『文藝春秋』『週刊文春』など数々の雑誌のデスク、編集長を経て、現在は『WILL』の編集長である花田氏。経歴が経歴だけに、作家や有名人の裏話満載。作家のもとへ原稿の催促に通い詰めた新人編集者時代。脂が乗りきってからは、政界・財界を相手に回してスクープを連発。本書は、著者がこれまで形にしてきた雑誌や週刊誌をぎゅっと圧縮して一冊にしたような本だ。
 題を見て、ベテラン編集者による編集の心得が書いてある本かと思い、手に取ったが、編集者の心意気が詰め込まれた本書は、ハウツー本などというやわなものではなかった。派手にレイアウトされたタイトルが宣言しているように。

(哉)

2008年12月01日

「職人学」

「職人学」

 小関智弘 著 株式会社講談社

 小関さんは、約50年にわたって旋盤工として働きながら、作家としてもご活躍され、町工場を取材したノンフィクションや小説を書いてこられた方。本書は、氏のお仕事のエキスのような内容になっている。見て、聞いて、実践されてきた人だけが書ける、現場で働く者の心意気と熱い血の通った『仕事論』・『人生論』といえるだろう。
 「機械にニンベンをつける」とは、小関さんがよく書かれることの一つだ。一つの仕事が工夫次第でやりやすくなり、生産効率が高まる。不可能に思えた仕事が、あっけなくできてしまう。そんな意味のことを「職人語」で表現したものだ。
 新しい技術が導入されて、一見時代遅れの用済みなものと見なされそうな技術が、経験を積んだ職人の手によって現代のハイテク技術を支えているという例は数多い。また、若い世代の新しい技術と職人たちの経験値がコラボレートして、すばらしい物が生み出される場合もある。町工場で金属を加工したことのない者にも、小関さんの文章は説得力を持って迫ってくる。
 また、氏が取材の過程で再会した、かつて共に働いた仲間たちの積み重ねてきたもの失ったもの…。「人生」という地層の断面を、小関さんの筆は鮮やかに描き出す。

(哉)

2008年11月04日

「いぬ会社」 「いい仕事の仕方」

「いぬ会社」

そにしけんじ 著 竹書房  発行

〔キャラクターがカワイイ!〕

 書店でこの表紙を見かけたら、店員さんに見つからないように、そっとカバーを外してみて下さい。パグの佐藤君とチワワの鈴木君が泣く泣く書かされた始末書が載っています。そのユーモアに笑ってしまうと同時に、私のような佐藤・鈴木両君に近い社員にとって文書見本として参考になりそうな気がしました。
 ところで、もし、あなたの上司がとても恐い人だとしても、いぬ会社営業3課のブルドッグの部長よりはましなのではないでしょうか。なにしろ、ブルドッグの部長は部屋にいるときは鎖でつながれているということなのですから。
 犬の習性と会社に出て働くということが、うまくミックスされた楽しい漫画集です。

 

「いい仕事の仕方」

 江口克彦 著 PHP新書

〔にんげんのかいしゃにつとめる あなたへ〕

 自己啓発書オタクを自認する私ですが、本書は、仕事をするということについて、最も要領良くコンパクトにまとめられているのではないかと思える著作です。若い人から、リーダーと呼ばれる立場の人まで、役に立つ内容となっています。
 「デキル人になる…」みたいな派手な本ではなく、自分の仕事を堅実に積み上げて成長していきたい人のために書かれた入門書です。

 

(哉)

2008年10月02日

「ペット・サウンズ」「嫉妬」

「ペット・サウンズ」

ジム・フリージ 著/村上春樹 訳 株式会社新潮社 発行

 60年代中盤、イギリスのビートルズと人気を二分していたアメリカのバンド、ビーチボーイズ。本書は、そのリーダー、ブライアン・ウィルソンの音楽と半生を、作家ジム・フリージが回顧して綴ったもの。
 本書のタイトル「PET SOUNDS」は、ビーチボーイズの同名のアルバムから採られている。ビートルズの「Sgt.Paper's Lonly Heart Club Band」の先駆となる刺激に満ちた作品で、ロックの最高傑作アルバムと呼び名も高い。しかし、それは、ビーチボーイズの作品というよりも、リーダーであるブライアン・ウイルソンがスタジオミュージシャンを指揮して作り上げた、ソロワークに近いものであった。しかし、そのとき彼は、心身ともに危機的な状況に直面して苦しんでいた。
 ドラッグに溺れ、心身に異常をきたしながらも、ブライアンは、なぜ、「PET SOUNDS」を作り上げねばならなかったのか。スタジオにこもって自分の音を彫琢する、神に選ばれたミュージシャンの生き様に、読むものは圧倒されるだろう。

 

「嫉妬」

 アニー・エルノー 著/堀茂樹・菊地よしみ 訳 株式会社早川書房 発行

いったん「嫉妬」という感情にとりつかれたら、やっかいだ。その感情が思考を占領し、行動を規定する。フランスの作家らしく乾いた文体で、そんな状況が描き込まれた本書、頁を繰る指がひりひりする。「毒をもって毒を制する」とは本書のためにあるような言葉だ。

 

(哉)

2008年09月02日

「ブッダが贈る15のことば 智慧のことばを名曲にのせて」

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「ブッダが贈る15のことば 智慧のことばを名曲にのせて」

オーディオブック(佼成出版社)

 ダウンロードして携帯音楽プレーヤーで聴くのは、音楽だけではありません。朗読された本、いわゆるオーディオブックも、携帯のプレイヤーと非常に相性が良いのです。たとえば本作…。
 「知恵の有無より、自分に与えられた仕事をどれだけ誠実にこなしているか」、「人と比較するのを止める」、「自分と対話し自分の人生をゆっくり歩んで行く」、「今ここを大切に」、「人に期待してばかりいず、自ら率先して行動で示す」、「自分で自分の価値を決めてしまう前に、自分の能力を最大限に活かすにはどうすれば良いか考え、アクティブに生きる」、「他人の目的のために、自分の目的を捨て去ってはならない」、「回りの意見に左右されず、真実を語り、自分のなすべきことを行う」、「勝敗という価値観を捨て、本当の安らぎとは何かを模索する」、「変化はあたりまえと腹をくくる」、「自らをよりどころとせよ」
 生きて行く勇気がわいてくるような内容が、クラシック音楽をバックにかんで含めるように語りかけられます。寝る前にベッドに横になって聴く。お昼休みに、お気に入りの喫茶店で、コーヒーカップを片手に聴く。ページをめくる必要もなく、最高の気分転換となることでしょう。

(哉)

2008年08月31日

「忘れられた日本人」 、「風の人宮本常一」

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「忘れられた日本人」

宮本常一著 岩波文庫 発行

「風の人宮本常一」

佐田尾信作著 みずのわ出版 発行

 「忘れられた日本人」は、民族学者の宮本常一が日本各地の村を取材し、老人たちから聞いた話をまとめたものです(1960年発行)。13の章からなる本書は、日本の村に残っていた、あるいはその当時すでに失われてしまった習俗の記録。しかし、語り手の存在感が際立っており、民衆を主人公にした短編小説の趣きです。
 最も印象深かった章は『土佐源治』(盲目の馬喰の老人が自身の女性遍歴を語る)。芝居となり、坂本長利という役者が40年間にわたって1000回以上も演じつづけておられるということです。
 各地の方言で語られた老人たちの昔話や、昭和30年以前に宮本氏が撮影した写真を眺めていると、体験はしていないのに懐かしい。本書のページを繰りながらノスタルジーに浸ってしまいました。
 「風の人 宮本常一」は、宮本氏といろいろなかたちで係わってきた人々を丹念に取材して、『宮本常一』という人にせまった労作です。『宮本常一』とこんなにも真摯に向き合っている人たちがいる! 上記のように宮本氏の本を読んでノスタルジーに浸っていた私は、恥ずかしくなりました。
 じつは、坂本長利氏の芝居についは、本書で知りました。宮本常一をめぐる世界自体が面白い。今まで民族学など学んだこともない私ですが、本書に刺激されて、『宮本常一』という現象にはまってしまいそうです。

(哉)

2008年07月01日

「硝子戸の中」、「調査されるという迷惑」

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「硝子戸の中」

夏目漱石著 株式会社岩波書店 発行

「調査されるという迷惑」

安渓遊地著 みずのわ出版 発行

 かつて、病気のため書斎(硝子戸の中)にこもっていた夏目漱石は、そこにやって来る人たちの話・伝聞した情報をもとにして、過去の出来事や自分の境遇に思いをはせたエッセイを書きました。話題は他人の親族の消息、しかも大正時代に書かれたものなのに、なじみの店で友人の話を聞いているような安らぎを感じるのはなぜでしょう。作者が「漱石」だからでしょうか。新聞連載ということで、短めの章だてで読みやすく、元祖「すべらない話」とでもいった趣です。もっとも、声を立てて笑ってしまうような種類の話ではありませんが。
 ところで、いま手に取っておられる、このささやかな印刷物の裏面は「舟入散歩」という企画になっています。これは、社内にこもりっきりで仕事をするのではなく、外に出て地元と積極的に関わって、視野・仕事の幅を広げようとする試みの一つです。言わば「硝子戸の中」とは逆の行き方です。
 その取材中、あらかじめ記事にまとめやすいカタチを思い描いて、人の話を聞くことがあります。これはマスメディアのやらせにつながる危険な考え方かもしれないと、なんとなく感じてはいたのですが、安渓さんのブックレットを読んで、あらためて身の引き締まる思いがしました。

(哉)

2008年06月02日

「孤独な少年の部屋」

中島義道 著 角川グループパブリッシング 発行

 著者の中島義道氏は哲学者で、以前にもこのコラムで著作の紹介をしたことがあります。善意の言葉や善行の裏にびっしりと苔のように生えている自己愛を徹底的に拒否したり、日本中に蔓延している騒音(「エスカレーターの足もとにお気をつけ下さい」のような言わずもがなのアナウンスetc.)や光害(昼間でもついている看板の光etc.)を糾弾したりとアグレッシブなイメージの強い中島氏ですが、本書でクローズアップされているのは、氏の、こわれてしまいそうなほどの繊細な部分。
 カイコが自分の吐いた糸で繭を紡ぐように生み出された、少年時代の中島氏の創作物にまつわる思い出が語られています。空想を織り交ぜて描かれた地図、偏執狂的な緻密さで書かれた観察記録やノート類、涙をぬぐいながらホルマリンの注射を虫たちに施して作製した昆虫標本、模造紙に書いた10mを超える歴史年表…。そして、たぶん著者の他の著作で深くは言及されたことが無かった、子供時代の家族と友人たちのエピソード。
 本書で見られる中島氏ほどすごいものではなかったのですが、頁を繰りながら、純白で真摯だった少年時代の自分をなつかしく思い出しました。

(哉)

2008年05月02日

蜘蛛の糸は必ず切れる

諸星  大二郎 著   株式会社 講談社 発行

 背すじも凍るような恐怖ではなく、じっとりと汗ばむような恐怖でじわりじわりと責めてくる。もう読むの止めたいのに、指が吸い付いたように頁を繰るのを止めてくれない。「こわい」+「せつない」+「おもしろい」。
 著者の諸星大二郎氏は漫画家で、本書は二冊目の小説集(一冊目は「キョウコのキョウは恐怖の恐」)。漫画家だからか、文章がビジュアルでわかりやすい。もっとも、彼の漫画は、文章の量も多いし、着想の面から見ても文学的な傾向があるので、小説の執筆は自然の流れ。漫画と小説がクロスオーバーする作家といえるだろう。
 いつ来るかわからない船を待つ人々の心情を粘っこくと描き込んだ「船を待つ」、不思議なOLが不可思議な生活を語る「いないはずの彼女」、同窓会で徐々に暴れて行く男の秘められた過去(「同窓会の夜」)、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の大胆な変奏曲「蜘蛛の糸は必ず切れる」。四つの中短編が収められた本書は、人の心の闇にたらされた銀色に光る蜘蛛の糸かもしれない。
 蜘蛛の糸を表現した線が表紙~扉~目次と続く等、しゃれた装丁も本書の魅力。

(哉)

2008年04月02日

「B型 自分の説明書」

Jamais Jamais 著  株式会社文芸社 発行

ぼくらはこんな本を待っていた。B型専用の説明書を書こうという奇特な著者が現れてくれて、うれしい。自分の日常生活を顧みつつ、本書を読むとたしかにあたっていると思う。
「まわりがやる気満々だとやる気しない。」
「まわりがやる気ないと、がぜんやる気。」
「地味でめんどくさい作業を楽しめる。」
「自分の居場所の中で「1人になれる空間」を探しちゃう。」
「価値あるモノに価値をつけない。」
「価値ないモノに価値をつける。」
「欠点を指摘されて一応悩んでみるけど、直す気はさらさらナイ」
引用していくときりがない。
極めつけは、
「右と言われれば左と言う。それが基本。」
B型の人もそうでない方も、ぜひ本書を一読されることをおすすめします。B型の人は、他の人に迷惑をかけないために。
他の血液型の人は、B型への思いやりを持ちつつ、B型の人に振り回されないために。

(哉)

2008年03月15日

「求めない」、「LIFE」

加島祥造 著 「求めない」(株式会社小学館 発行)、「LIFE」(株式会社パルコ発行)

私と本書の著者との出会い(といってもこちらの一方的な思いこみですが)は、自宅に引きこもって暮らしていた若い頃夢中になった英米文学の翻訳本です。マラマッド、サキ、ラードナーといったお気に入りの作家の作品を翻訳されていたのが彼でした。
引きこもり生活も煮詰まり、私は普通の人よりも10年遅れて、社会に出ることになりました。自宅と会社を往復する生活を続けているうちに、世間擦れしたと同時に、社会に出るまでは考えても見なかったような悩みを抱くはめになりました。そして、それは解決されることなく、自分の中で負のスパイラルを描くばかり。
年が明け、ここ数年しばられ苦しんできた「それ」と「それ」にまつわる全ての事柄とさよならする(一部の仕事さえも…。社長、ごめんなさい)決心をし、それを行動に移しました。そんなとき、加島氏の本と再会したのです。

「求めない すると」…「いま持っているものが いきいきとしてくる」、「自分の声が聞こえてくる」…。(「求めない」より)
かつて、すばらしい英米文学の翻訳で人生というものを疑似体験させてくれた著者が、今度は前とは異なるゆるやかな語り口で、私を励ましてくれているような感じがしました。
「自分がいま ここに在る そのことに 驚ろくとき 君は生きているのだ」(「LIFE」より) (哉)

2008年02月18日

TAKEO DESK DIARY 2008

株式会社 竹尾 発行

 【年間】と【見開き1ヶ月】のデスクダイアリーですが、紙の販売をしている会社と美術家・詩人・作家とコラボレートして制作されたものだけに、一般のダイアリーとは一線を画したものになっています。あたかも展覧会の図録とかアーティストの作品集といった趣です。
 毎年テーマを決めて制作されているこのTAKEO DESK DIARY 2008年版は「紙と言葉の十二宮」。デザイナー・アートディレクター・アーティストといった多彩な顔を持つ立花文穂氏をまとめ役に、谷川俊太郎、別役実といった詩人や作家の「言葉」がちりばめられグラフィックな表現と融合させた図版が盛り込まれています。
 日記帳というよりも美術品のようなこのダイアリーに、日常の出来事やスケジュールを書き込むのには勇気がいります。私は、昨年も一昨年もこのTAKEO DESK DIARYを購入しました。でも、自分のペンで汚してしまってはこの美しいものが台無しになってしまうと躊躇しつつ、結局何も書けないまま終わってしまいました。でも、今年は、思い切って元日からこのダイアリーに筆をおろしてみたのです。それからこのダイアリーを開くたびに、罪悪感とぜいたくな気分が入り交じった不思議な気分の高揚を味わっています。いわば、ベンツで近所のコンビニに買い物に行くような感じでしょうか。

(哉)

2008年01月08日

ワインバーグの文章読本 自然石構築法

ジェラルド・M・ワインバーグ 著
伊豆原弓 訳 株式会社翔泳社発行

 人の話を聞いたり、様々な物を見たりして浮かんだアイデアを自然に転がっている「石」に見立て、文章を書くということを自然石を使って「石垣」を組むことに例えて語る文章作成の指南書。少しばかり皮肉っぽい文章がおもしろいです。
 自分の書きたいものだけを書きなさいという本書の主張は、どちらかというと会社の中で作成する固い文書にはなじまないかもしれませんが、方法論としては使えるでしょう。手元にいつもメモできるツールを用意して、見つけた「石」を書きとめ、こんな「石垣」にしようという目的(構想)に添った「石」を選んで「積み」あげていく。とりあえず使えそうにない石は、いつか使うときのためにストックしておきなさいとのこと。この「石」には色々な種類があり、「時間」という石もあると著者は言います。細切れの時間をいかに有効に使って石垣を組んでいくかという問題です。
 ポイントは、石を集めること。自分の気持ちに合った石を見い出し、組んだ石垣は、自然と個性的になると、著者は言います。私もさっそくペンとメモ帳を携帯するようになりました。

(哉)

2007年12月10日

不思議なほどうまくいく人

メッテ・ノルガード 著
柴田昌治 訳 三笠書房発行

 会社や学校で浮いているなと感じたときは、アンデルセンの「みにくいアヒルの子」のストーリーを思い出しましょう。みんなからばかにされ、変なアヒルだと思われていた主人公は、ある日水面に映った自分の姿を見て驚きます。そこには真っ白な美しい鳥が自分を見つめ返していたのですから。
「自分の能力を低く見ることは、自信を持つことよりも簡単です。だから、人は自分の本来の力を100%出し切れないのです」と著者は言います。
「失敗するのはかんたんです。学ぶのをやめればいいだけ。しかし、大きな成功を生むには、たくさんの小さな努力が必要です。毎日少しずつの発想の転換が素晴らしい実りをもたらします」とも。
 純粋な心は、「みにくいアヒルの子」の白鳥のように、いつかきっと空高く羽を広げるときが来るでしょう。本書のくれたメッセージの数々を読んで、自分も白鳥になる日が訪れるかもしれないという勇気が湧いてきました。

(哉)

2007年11月05日

じゃがいもの花

池 田 風 彦 著 (「今月の言葉」執筆者)
題字 :石原千穂子 挿絵 :折本千代子

 本書は、このタニシインフォメーションに連載中の「今月の言葉」2003年の3月から2007年5月までの50本の文章をまとめたものです。その季節その月にちなんだ話題が綴られたコラムをまとめて読んでみると、風彦氏の博識に驚かされます。氏独特の飄々とした言い回しで語られている文章は、風彦流の歳時記、文明批判。B6(12.8×18.2cm)のハンディな本書ですが、視野の広い本なのです。
 それにしても、このインフォメーションの作成に関係している者として、「じゃがいもの花」を発行させていただけたことは、とても感慨深いものがあります。毎月のインフォメーションの作成は、まず風彦さんからファックスで送られてくる「今月の言葉」の原稿を入力する作業で始めてきたわけですから。

(哉)

2007年10月20日

野鳥観察の楽しみvol.1

新名 俊夫 著
タニシ企画印刷 発行

 本書の舞台となっている広島県東広島市は、広島市から広島大学移転・近隣に広島空港の開港と、県の大型開発は東広島を要にすえて進行されつつあるのではないかと思えるほどの発展ぶりです。それだけに、最も懸念されるのが自然破壊・自然環境の悪化。しかし、減少傾向にあるとはいえまだまだ自然豊かなこの地域の田んぼやため池には、多くの野鳥が飛来し、そこを住処として暮らしている鳥たちもたくさんいます。  新名さんは、そんな野の鳥たちをカメラのファインダーを通して粘り強く追い続けてこられ、足掛け5年間、当社タニシ企画印刷のサイトに毎月写真と文章と寄稿してくださいました。それをまとめたのが、本書「野鳥観察の楽しみvol.1」です。
 本書には、野鳥たちのカラー写真と撮影時の苦労話や鳥たちの特徴・習性・人間との関わりについて触れた文章がおさめられています。現場主義の視点で書かれた文章は、素人には野生の鳥たちに関するトリビアの宝庫としてうつるでしょう。また、鳥に詳しい方にとっても「納得」の一冊となるはずです。家族でバードウォッチングでもしてみようかと考えられている方にとっては格好の手引きとなることでしょう。
 当社のサイトで、新名さんの連載は現在も継続中。vol.1を発行したばかりの今言うのも気の早い話かもしれませんが、「野鳥観察の楽しみvol.2」の刊行をお手伝いさせていただける日が楽しみです。

(哉)

2007年09月03日

オトナの片思い

石田衣良、他 著
角川春樹事務所 発行

 タイトルが良い。本書は短編を集めたアンソロジーですが、この「オトナの片思い」という題名が、本書の中で最もよく出来た作品じゃないかと思います。学校の先生が見たら、即座に、〔大人の片思いと子供の片思いの違いを200字以内で述べよ〕という設問が浮かんでくるかもしれません。
 書店に平積みしてある本書を手にとった人は、表紙をじっと見つめながら考えるにちがいありません。『あの時の私の片思いは…』思わず携帯を取り出して、彼の電話番号を表示させてみようとするけれども、残念、ない。それは、あの日あの時、覚悟を決めて消去のボタンを押してしまったのだから。
 日本の人口は127,767,994人(国勢調査 平成17年10月1日)、世界の人口は2007年7月現在の推計で66億人。地球上で、これだけの人が、この瞬間にも、だれかに片思いをしてそれが満たされず切ない思いをしている(赤ちゃんだって、欲しいときにおっぱいがないことだってあるでしょ)、地球ってなんていとおしい星なんでしょう。そんなせつない星「地球」だからこそ生れた本だと思います。 

(哉)

2007年08月10日

カスバの男 モロッコ旅日記

大竹伸朗 著
集英社文庫

 さまざまな印刷物や紙切れ・布切れを貼り付け、さらに絵の具を塗りたくるという行為を記録するスクラップブック帳―絵日記を長年にわたって作りつづけている大竹伸朗というアーティストを私が知ったのは、数ヶ月前のNHK「日曜美術館」でのこと。テレビの画面に移っている絵の具でゴワゴワになった画帳を見て、これが日記かと、びっくりしたものだ。
 そんな、画家の事をもっと知りたいと思っていたら、彼の「視線」=「思考」が、ぎゅっとつめこまれた本に出会った。
 照り付けられて上昇する気温、街に響き渡る1日5回コーランの詠唱、しつこいハエ、ラマダンでキレかけている現地のタクシードライバー…。日本とはかけ離れた環境の異国モロッコで、画家は、カスバの男になりきって、楽しんでいる。旧い街並みを徘徊し、普通の旅行者であれば目を背けて通り過ぎるような路上のゴミ・ゴミの集積場、汚れた壁に視線を向ける。興味が湧くと、色鉛筆が画用紙の上で踊る。現実と夢が交錯する。
 本書を閉じたとき、ちょっとの日差しで暑がっている、この日本の夏がパラダイスに思えてきた。なんだかクーラーみたいなな本だ。 

(哉)

2007年07月10日

デザインのひきだし2

グラフィック社
2007年6月25日
初版第1刷発行

 何やらきれいでかわいらしい「モノ」が好きです。とくに紙をゴショゴショッといじって作った、「ほぉー」っとうならされるような「モノ」。最近では、街角で手渡されたauの「決める夏。」という広告。これは、開くとA4のチラシですが、うまく折りたたんであって、サッカーの審判が着ているシャツのような形になっているので感心しました。こんな私みたいな性格でなくても、本書を開けば、そこに紹介されている数々のアイテムに目を奪われるはずまちがいなしです。「ほぼ日」グッズや各社の工夫を凝らしたノベルティーグッズがいっぱい載っています。それらを参考にして、記載されている業者にたのめば、自社をグッとアピールするアイテムを製作することも出来るでしょう。
 クラフト紙はただの物を包むだけの紙ではない。クラフト紙の製造過程から、一般的に包み紙として認識されているクラフト紙を書籍の本文にまで採用したデザイナーの談話。
 半分空気で出来ている紙とは。「吾輩は猫である」を今の感覚で装丁したらどんな本ができあがるのか。鉛筆デザインプロジェクト、などなど、興味津々の記事が目白押しです。
 ところで、ここ数年来、未経験の活版印刷に憧れ続けてきた私が、最も心引かれたのは、「巻末特集 まだまだ現役 活版印刷」という記事です。手動式のコンパクトな活版印刷機FOR SALE!とのこと。即、本文中に記載されていたURLにGOしました…。ああ、心がズキズキ痛む、疼く。女性でも移動させることが出来るほど軽量で、卓上にポンと(でもないかもしれないが)置けるらしい。うちの父親が乗っているトヨタのヴィッツより安い。ローンを組めば何とかなるかも…。清水の舞台が近くにあれば、思い切って飛び降りてしまいそうです。
 「あの人は引き出しが多い」という表現があります。経験豊かで、アイデア豊富な人=引き出しの多い人なわけですが、本書を閉じたとき、あなたの「デザインのひきだし」(の中味)は、少し増えていることでしょう。 

(哉)

2007年06月10日

図書準備室

田中慎弥 著
新潮社 発行

 本書には中篇が2作収められている。
 表題にもなっている『図書準備室』は、三十歳を過ぎてもなお今まで一度も働いたことのない青年が、自分の心境を語るという形の小説。法事で会った伯母に、自分がなぜ働こうとしないのかを話し始めるのだが、主人公の話す内容は意外な方向に進んでいく。
 もう一つの『冷たい水の羊』は、同級生たちから過酷ないじめを受けている中学生の少年の心の動きを表現した作品。後半は、いじめられている少年だけではなく、いじめている側の少年・いじめを傍観している者の立場にも立ち、複数の視点からそれぞれの心理を描写している。いじめのシーンの描写は具体的で、そこだけとばして読んでしまいたくなるほど強烈だが、この具体的な描写によって主人公の少年の独特に醒めた心理が、より強調される。
 本書を読んで、一般的に「弱者」と決め付けられてしまう立場の人間にも言い分があり、それは表層的な解釈では捉えきれないほど膨大な心的エネルギーを持っているのだと、あらためて考えさせられた。 

(哉)

2007年05月15日

ありふれた魔法

盛田隆二 著
光文社 発行

 主人公は、44歳にして銀行の支店次長のエリート。もちろん妻も子供もいます。最初、この主人公のことが、独身(しかもこの本の主人公より年上!)の私の目にはかけ離れた存在に映りました。しかし、読み進めていくうちに、本書のリアリティに富んだ文章にぐいぐいと引きずり込まれ、いつのまにか融資先の状況について不安にかられたり、無断欠勤を続けている部下のことが気にかかったり、ひいてはそれらが自分の昇進の道を脅かすのではないかと気を揉んだりしてしまうといったような、物語の世界と現実の世界が重なるような感覚を体験しました。メインストーリーは、主人公が「ありふれた魔法」にかかり、酔いしれ、さめていくまでの経緯を描いたものと要約できますが、はたしてその「ありふれた魔法」とは…。私も主人公のように「ありふれた魔法」にかかってみたいものです。
 ところで、ここで、秘密のクイズに移行します。本書のタイトルになっている「ありふれた魔法」ということばは、J-POPの歌詞の一節からとられたものです。その曲名と演奏しているバンド名をお答えください。正解された方2名様(早い者順)に手作りの秘密のプレゼントを差し上げます。 

(哉)

2007年04月02日

オテル モル

栗田有起 著
集英社 発行

 「オテル・ド・モル・ドルモン・ビアン」。そのオテル(ホテル)のフロントデスクの募集条件は、夜に強く、孤独癖があり、いらいらしないこと。一風変わった面接にも見事に合格した「本田希里」は、さっそく次の日から働くことになる。
 地下13階建て(?)のこのオテルは会員制契約型宿泊施設であり、日没から日の出までの滞在を原則とし、最高の眠りと最良の夢を提供することを目的とする、何とも不思議極まりない職場であった。さらに、希里の複雑な家庭環境が、この物語をいっそうややこしく(おもしろく)している。奇妙な感覚の中にユーモアがちりばめられ、ずっと読んでいたい気分にさせられる。春の陽気でねむたくてしかたないこの季節にぴったりのストーリーともいえる。
 言うなれば現代人の悩みの一つである「眠り」が最大のテーマであろう。毎日ぐっすりの人も、眠れなくて困っている人も、この本を読んでオテルを体験してみては? いい夢が見れるかも…。

(北)

2007年03月12日

知らずに他人を傷つける人たち モラルハラスメントという「大人のいじめ」

 香山リカ 著
KKベストセラーズ発行(ベスト新書)

「モラルハラスメントとは、ことばや態度で繰り返し相手を攻撃し、人格の尊厳を傷つける精神的暴力のことである」

 人間関係激突の二大空間、家庭と職場。ここでは誰でもモラルハラスメント(モラハラ)の被害者あるいは加害者になってしまう危険性が潜んでいます。
 会社で身を粉にして働いて給料をもらってきているのだから十分自分の責任を果たしていると考えているお父さん。自分以外の8割の人は会社の利益に貢献していないと考えている超エリートビジネスマン。あなたたちはモラハラ加害者である可能性大です。
 主人の言うことはごもっとも。私の努力がいたらないせいで、聞き分けのない子に育ってしまったと一人で悩んでいるお母さん。自分なんか、仕事が遅いないからみんなにバカにされてもしかたない、転職しようかなと思っている社員さん。あなたがたは、まさにモラハラ被害者。
 奥さんの相談に真摯に耳を傾けず、彼女を育児ノイローゼにまで追いやる。部下あるいは同僚を無視して、出社拒否・退社に追い込む。モラハラによる深刻な事態を防ぐために、夫婦で、あるいは会社ぐるみで本書をテキストにして話しあう機会をもってみられてはいかがでしょうか。

(哉)

2007年02月20日

新 自分を磨く方法

 スティービー・クレオ・ダービック 著
干場弓子 訳
ディスカバー・トゥエンティワン 発行

 書店や図書館に行けば膨大な数の自己啓発関係の書籍を見ることができるし、会社の費用でその手のセミナーに参加できる可能性もある。自分を深め、仕事に必要な技術を高めていくためには、いろいろな本を読み、さまざまな人々と接して人のやり方を吸収していかなければならないわけだが、その第一歩として、本書は最適だ。
 また、新入ばかりでなく、すでに社会に出て自分のキャリアを築きつつあるベテラン、あるいは躓いて少し落ち込んでいる人にとっても、本書の力に満ちた、それでいて包み込むようにやさしい文章に触れれば、生きていく勇気が湧いてくるだろう。
 頑張ることばかりが重要だと一概にいうことはできないが、泣いても笑っても自分で自分の人生を背負って生きていかなければならないわけで、充実した人生を送りたいならば自分を磨く努力は必要だ。自分磨きのレシピがここにある。

(哉)

 哉の店長イチオシ
この春社会に飛び出す若者に最適な1冊!
生きテクマニュアルなのだ!

2007年01月20日

 原  宏 一 著
実業之日本社 発行

 小説のおもしろさのひとつに、この先この話がどう展開していくのかという、ワクワク感や期待感がある。そういう意味でこの物語は存分に 楽しませてくれる。
 富士の裾野に広がる青木ヶ原樹海。一度入り込むと二度と抜け出せないといわれているその奥地。人知れず自給自足の暮らしをしている老人 のもとに、3人の男女が迷い込む。最初のうちは縄文生活を楽しんでいたのだが、住み家にしている洞窟の奥に鉱脈を発見してから話がややこ しくなる。それぞれの思いが錯綜する中、老人の提案する「感謝と祈り」をテーマとした理想国家建設に進んでいくのだが…。
 途中で本を閉じても次が気になって仕方が無い。完全に物語に引き込まれているのである。こういう小説が読みたいと常々思う。一度入ると なかなか抜け出せない、樹海小説とでも呼ぼうか。 

(北)

 

2006年12月20日

井上嘉瑞と活版印刷

 著述編・作品編  印刷学会出版部 発行

井上嘉瑞(いのうえかずい)。明治35年(1902年)生れの彼は、自ら活版印刷機と活字を揃え、活版印刷の工房を開いた人。その人となりの紹介は、本書の「著述編」に譲るとして、ここでは、「作品編」(活版印刷物のサンプル集)に掲載されている文章を見てください。
印刷会社に勤務している者が絶対に口にしてはならないことを、これほどまでにあっけらかんと宣言されては、うらやましくてしかたないのです。
在りし日の嘉瑞が腕によりをかけて刷った印刷物をスキャニングし、最新のページレイアウトソフト『インデザイン』で組み版された本書は、活版印刷の持つ味・雰囲気を再確認させてくれます。

(哉)

2006年11月20日

ストレスフリーの仕事術

デビット・アレン 著  二見書房 発行

・・・・心にゆとりを持って仕事を楽しみたい人に最適な本・・・・
 押し寄せる仕事に翻弄されて、何から手をつけたらよいのかわからない。逆に、ぽっかりと手が空いて、所在の無い時を過ごす。こんな状態は、本書を開けばすっきり解消するでしょう。って、僕はこの本の宣伝マンではないので、今すぐ本屋に走りなさいとまでは言わないけれど、一読の価値あり、いや、読むのと読まないのでは、今後のあなたの仕事に大きな差が出るだろう、くらいは言いたい。「忙しい」とグチるヒマがあったら、この本の「第5章」だけでも目を通してみて。
 それにしても、この本に出会わなかったら、と思うとぞっとする。海図と羅針盤を持たずに太平洋の真っ只中を漂うようなもの? ページのいたるところに赤線を引いて、ポストイットをペタペタ張った挙句、ノートに書き写して、パソコンでも入力しておきたいとまで思う本なので、本音のところ、人には教えたくないのです。あなたが書店に着く前に駆けつけて、僕が全部買い占めてしまいたい。今年の「僕的ビジネス書部門MVP」は、本書で決まり! って、やっぱり、僕は本書の宣伝マンなのでしょうか?

(哉)

2006年10月20日

てのひらの迷路

石田衣良 著  講談社 発行

 短編小説よりももっと短い掌編小説を集めた本だから「てのひらの迷路」。24篇の作品に、作品執筆の経緯を綴った作者のコメントが添えられています。なんだか作家と一緒にカフェでテーブルをはさんで、親密な話を聞いているような感じがグッドです。

(哉)

気くばりのツボ

 山﨑拓巳 著  サンクチュアリ出版 発行

 自分を変え、人に好かれるコツが、ドドーンと公開されちゃってます。会話がかみ合わない人、必読。 おれ、こんなにイイ人なのに、どうしてわかってもらえないの、と唇をかんでいるあなたにおススメします。なんであの子ばかりモテるのとグチ言ってる人は、本書を読んだら納得します。あの子はこの本に書いてあるようなことがさりげなーくできちゃってるわけですよ。

(哉)

BEAMS発行の雑誌――

表(?)から開けば男性向け、180度回転させて裏側(?)から開けば女性向け。アート感覚なイラストと写真満載の情報誌。ビームスにて\200で販売。今号の特集は、BACK TO THE 1973年。約30年前をファッション写真で構成。

(哉)

2006年09月20日

季刊「がんぼ」2006年第12号

 (有)南々社 発行

 「秘密基地だ。その場所にたどり着き、思ったことはそれだった」という書き出しで紹介されているのは、まさしくあそこのことではないか。
 私の勤務している会社と目と鼻の先にあり、いつも気になりながら、特別な資格がなければ入れないのではないかと、足を踏み入れることをためらっていた、あの、橋のたもとのキャンピングカー+ 粗末な小屋(失礼!)。写真と丁寧なレポートで、数年間いだいてきた疑問が一気にとけた。パスタの店らしい。常連のお客さんのことばが引用されている。
  「ここではいい料理、いい雰囲気、いい仲間に会える」
 「私も場所は教えたくない」とライターはむすぶ。さすがに電話番号は書いてあるけれど、秘密基地の住所は掲載されていない。自分で探しなさいという、粋な計らいだ。
 この小さなスペースを秘密基地の件に費やしてしまったが、この「がんぼ」は、広島人にとって見慣れた情景の美しさや日常の生活の良さを再認識させてくれる雑誌だ。かといって、いわゆるタウン誌ではなく、広島から読みごたえのある情報を発信するというスタンスの、志の高い雑誌。私の住んでいる市内に、こんな本を出版している会社があるのを知って、頼もしく思った。
 次号「がんぼ」2006年秋号(Vol.13)は、10月25日発売予定とのこと。今度はどんな「発見」をさせてもらえるだろうか。秋が楽しみだ。

http://www.galilei.ne.jp/nannansha

(哉)

 

2006年08月20日

破局 THE BREAKING POINT

 ダフネ・デュ・モーリア 著
吉田 誠一 訳
早川書房 発行

 夏なのでホラー。お決まりの選択ですが、本書はホラーといっても変化球、奇妙な味の話が集められた短編集です。
 英語のタイトルをYahoo!の辞書(プログレッシブ英和中辞典)で調べてみたら、
【BREAKING POINT】(人が)耐えられる限度, 限界点, (事態が)持ちこたえられる限度, 決裂点;《工》破壊点
とのこと。なるほど、ここにおさめられた6つの短編の登場人物たちは、破局の人生に向かって落ち込もうとしている極限の状態にある人たちばかりです。20世紀前半に書かれた外国の作品ですが、今読んでも新鮮で、共感できるのは、作家の目と筆が人間の本質をついているからでしょう。
 最後におさめられた「あおがい」という作品の〈自分の不幸の原因を認識できない〉主人公などは、あなたの周囲を見回してみれば、必ず一人は見つかるに違いないと言い切ることができます。いや、もしかしたらあなた自身がそうなのかもしれない。そうだとしたら、あなたは、《自分の不幸の原因を認識できない人を描いた小説の意味を認識できない》という、二重の認識障害を病んでいるわけですが…。
 人間という合理的に割り切れない存在がかもし出す恐怖ワールドを描いた本書は、寝苦しい夏の夜のお供に最適な一冊です。(ますます寝苦しくなるかもしれないですが) 

(哉)