“「森を守れ」が森を殺す!”“伐って燃やせば「森は守れる」”という過激なタイトルのシリーズ第3弾である。その実内容は、日本の森林および林業に対する深い愛情に裏打ちされており、それを裏切り続ける日本の現状に切歯扼腕し、警鐘を鳴らし続けているいわば一種の憂国の書でもある。
本書の中で著者は、世界最大の木造建築物といわれる奈良大仏殿が、明治39年(1906年)の大修理で、屋根には鉄骨829トンが組み込まれて西欧建築手法のトラス構造を取り入れられ、イギリスから鉄骨やボルトが発注されている事実、屋根を軽くするために瓦を2万枚も減らし、葺き土もやめて番線で繋ぐ、場所によっては鉄筋コンクリートを使用するなど、われわれの知らない世界を、垣間見せてくれる。
実は著者は、この大仏殿の真実とカヴァー率67%という、世界有数の森林国家でありながら、実は82%も輸入に頼っている現状と重ね合わせてみせるのだ。ではなぜこんな不可思議な現象が起きているのだろうか。
日本はかつて、熱帯雨林を破壊すると非難されてきたが、その後アメリカ・カナダ材に移り、今ではシベリア材や北欧材が主な輸入先になっている。なぜ国産材が売れないのか、今までその理由を険しい斜面からという立地条件の悪さが価格面で外材に太刀打ちできない理由だと言い続けてきたのだが、北欧材、特にオーストリア材は日本に似た傾斜面にある樹木であるため、もはや言い逃れは出来ない状態になっている。最近では国産材の方が割安になってきたのに、なぜ建築業界からそっぽを向かれるのだろうか。
著者は森林所有者と建築業者の話し合いの現場で、建築業者から「乾燥が足りず寸法が狂っている、納期を守らない、大量にオーダーしても価格がむしろ上がる」というクレームに、なんら反論の声が上がらないことを何度も見聞きしている。
そこには需要の現状を直視しない林業界の閉塞した意識があり、この分野に一般企業の参入をかたくなに拒んできた、農林行政の後進性があった。
日本の住宅では、依然として木造建築に対する希求が強いのだが、要は日本の林業界に需要に応じる姿勢や体制がまったく欠如していることである。
そうした中で著者は、宮崎県の某林業会社が、あの中国に向けてスギ材を輸出している事実を見聞することになった。それらは太さがまちまちで、中にはごく細い枝のようなものが隙間を埋めるように混ざっていることに気付く。訊ねると、節や割れ目などを補修したり、隠したりするために役立つということであった。
現在木材の世界最大の輸入国になったといえ、安さを誇る中国に日本材が輸出できるという事実は取り組み方では瀕死の状態の日本林業を蘇生できるはずである。著者はそうしたノウハウにも紙数を割いているが、問題は官民一体でこの課題に取り組む必要が肝要であろう。この事例から著者は、それでもやり方によっては「瀕死の日本の森も再生出来る」と結んでいる。