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破局 THE BREAKING POINT

 ダフネ・デュ・モーリア 著
吉田 誠一 訳
早川書房 発行

 夏なのでホラー。お決まりの選択ですが、本書はホラーといっても変化球、奇妙な味の話が集められた短編集です。
 英語のタイトルをYahoo!の辞書(プログレッシブ英和中辞典)で調べてみたら、
【BREAKING POINT】(人が)耐えられる限度, 限界点, (事態が)持ちこたえられる限度, 決裂点;《工》破壊点
とのこと。なるほど、ここにおさめられた6つの短編の登場人物たちは、破局の人生に向かって落ち込もうとしている極限の状態にある人たちばかりです。20世紀前半に書かれた外国の作品ですが、今読んでも新鮮で、共感できるのは、作家の目と筆が人間の本質をついているからでしょう。
 最後におさめられた「あおがい」という作品の〈自分の不幸の原因を認識できない〉主人公などは、あなたの周囲を見回してみれば、必ず一人は見つかるに違いないと言い切ることができます。いや、もしかしたらあなた自身がそうなのかもしれない。そうだとしたら、あなたは、《自分の不幸の原因を認識できない人を描いた小説の意味を認識できない》という、二重の認識障害を病んでいるわけですが…。
 人間という合理的に割り切れない存在がかもし出す恐怖ワールドを描いた本書は、寝苦しい夏の夜のお供に最適な一冊です。(ますます寝苦しくなるかもしれないですが) 

(哉)