« 雑感(2月) | メイン | 今月の写真 »

今月の言葉(2月)

梅一輪一輪ほどの暖かさ

―嵐雪 

 梅の季節である。むかしから万木に先駆けて開花するので「春告草」の別名がある。

 植物学的にはバラ科の落葉樹。近来は園芸技術の発達で花の季節感が薄れているが、梅の花は、まぎれもなく春の序曲を彩る。

 冒頭の句は、芭蕉の門下、十哲の一人、服部嵐雪の代表句。梅が咲く時期は、冬の名残雪が舞う日もあるが、むかしもいまも春を待つ心情はかわらない。

 冬に咲く寒梅の品種もあるが、「冬梅の既に上を含みおり」と高浜虚子も、待春への思いを詠んでいるほどである。

 地球の温暖化の波及で自然現象に変化が云々される昨今。梅の梢に点々と蕾が吹き出すと気持ちがなごむ。それは桜の開花とはまた違った季節の風情がある。

 梅の原産地は中国。初期の遣唐使時代に薬用として持ち帰ったという。梅の薬用については、歳時記にも書かれており、いまここで詳述はさける。が、万葉集には梅を詠んだ歌は百数十首にのぼり、当時、花といえば梅の花に代表されていたほど。桜は、少なく四十五首ぐらいだとされていたが、平安時代、恒武天皇時代から観桜宴が盛んになり、しだいに花の座は、梅から桜に、詠まれる和歌も桜の賛歌へ変遷する。

 しかし、花=桜の前座をつとめる梅をこよなく愛した人は、昔もいまもいる。

 梅花の悲劇の主人公といえば、菅原道真。平安前期。漢学者で時の宇多天皇に重用され、右大臣に。それが藤原時平の中傷により太宰権帥に左遷、大宰府に配流された人。

 「東風吹かばにほひおこせよ梅の花主なしとて春な忘れそ」と詠んだ。その故事にちなんだ梅(飛梅)が大宰府天満宮にはある。

 梅の咲く時期はまた受験シーズン。菅原道真にゆかりのある社には、合格祈願の若者が押しかける。私が「二月の言葉」に冒頭の句をあげたのは、風雪に絶えて萌芽、蕾から花、そして実となる梅の一生に人生を見るから。 この句は『梅の時候句』だけでなく人生句。

 

 「紅梅にたつ美しき人の老い」

 

 俳人・富安風生が大宰府の梅林で詠んだ句を思い出した。

 

(風彦)