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ハイブリッド文化の精華「漢字とカナ」の融合-2

縄文が日本を救う! (51)

縄文塾塾長 中村 忠之

縄文塾
 

 日本人の英知は、そうした和風回帰の一環として、漢詩や漢文には順序を示す数字や返り点などを施して、日本流に読み解くという術(すべ)を発明したし、平仮名に併せて片仮名も生み出し、それを連綿現在(いま)に引き継ぐという離れ業さえやってのけるのである。

 かくして漢字・かな(カナ)の併用は、世界に冠たる高識字率を生んだ。このことがいかに素晴らしいことかだが、時代は下がりコリアにおいて李氏朝鮮(1392~1910)では文字(漢字)が知識階層に一部の所有物に固定され、大衆は文字が書けず読めずという「事大主義」状態の打破を願って、李世宗(1418~1450)は学者に命じて「ハングル文字」を作成させた。

 「ハングル文字」自体合成文字として非常に優れたものであったが、漢字との共通性もなかったこともあり、官僚を中心とした知識層の「小中華意識」も手伝って、その普及ははかばかしくなかった。結局漢字との併用による「ハングル文字」の普及を成功させたのは、日韓併合後の日本総統府の教育によってであった。

 それがいまのコリアでは、戦後ナショナリズムの台頭もあって、次第に漢字を廃して「ハングル文字」ばかりになっている。このことから見ても、いずれにも偏らぬハイブリッド文化の創成や継続は、思ったほど簡単なものではない。いまコリアにとって大きな問題は、次第に歴史・古典や古文書の理解が出来ぬ人たちが知識人の間に蔓延しているという事実である。

 漢字の本家チャイナではどうか。かな文字を持たないチャイナでは、識字率の向上を目指して、従来の文字=繁体字を廃して、簡体字という簡易漢字に置き換えてきた。そのためここでもコリアと同じく、古典や歴史を読めぬ人たちを増やし続けているのだ。

 戦後日本は、GHQの意を体した軽薄な御用学者によって、簡略漢字・当用漢字・常用漢字、それに新仮名遣いという愚挙を押しつけられてきた。(それでもコリア・チャイナに比べればまだましかも知れないが)そうした過去の失態を反面教師として、今後古典の学習、使用文字の増加などに取り組むことが重要課題だと知るべきであろう。

 さて、話は戻って太宰府に流された菅原道真は、結局許されぬままこの地で客死する。彼の死後、都では原因不明の疫病が流行して多くの死者を出し、時平までもが病死してしまう。迷信深い当時のことだ。これは道真の祟りであり怨霊のなせる仕業と恐れおののき、学問の宮「天満宮」を造営して彼の霊を鎮めることになった。

 どちらかというと道真に学術的にも人格的にもシンパシーを抱いていたと思われる時平が、彼を陥れた極悪人のように言われてきたのは不幸なことだが、時平が道真の政策を踏襲しながら、「古今和歌集」という絡め手からの官僚統治に成功したとしても、官僚たちへの決め手となったのは、道真への懼(おそ)れであったかもしれない。

 今の世も、官僚の壁を打ち破るためには、飛び切りの妙手と、彼らを恐れおののかす奇手が必要なのかもしれない。

 話を戻そう。文字を持たなかった日本人が漢字と出会って悪戦苦闘した末に、まず生み出したハイブリッド文字のプロタイプが万葉仮名であった。

 万葉集に収録された和歌には、漢字と漢字を仮名として使用した、いわゆる「万葉仮名」と呼ばれるもので、万葉集には「音(おん)仮名と訓(くん)仮名」が入り交じったり、チャイナの文を借用したり、当て字を用いたり、当時の人のウイットを偲ばせる創意に富んだ和歌は、今の我々にとってはまるで「判じ文」と同じくらい難解なものであった。

 柳瀬尚紀『日本語は天才である』は、たとえば、「孤悲?不有国(こひにあらなくに=恋にあらなくに)」など、「門外漢にとっても面白い」というのだが、とにかく難解であったことは間違いない。  (「に」の簡体語は常用漢字に含まれないので表示不能)

 その後仮名として、「四十七文字」プラス「ゐ・ゑ・を」を加えた五十音図が次第に定着していく。こうした仮名は、漢字を元にして表音文字として特化したもので、実際には万葉仮名も正式に仮名という位置づけとして、いまでは書道の世界で平仮名になって、生き残っている。

    ひらがな・カタカナの語源

あ(安)  い(以)  う(宇)  え(衣)  お(於) 
か(加)  き(幾)  く(久)   け(計)  こ(己)
さ(左)  し(之)  す(寸)  せ(世)  そ(曽)
た(太)  ち(知)  つ(州)  て(天)   と(止)
な(奈)  に(仁)   ぬ(奴)  ね(祢)  の(乃)
は(波)  ひ(比)  ふ(不) へ(部)  ほ(保)
ま(末)  み(美)  む(武) め(女)  も(毛)
や(也)  ゐ(為)  ゆ(由)  ゑ(恵) よ(与)
ら(良)  り(利)  る(留)  れ(礼)  ろ(呂)
わ(和) ん(无)

ゐ(為)  ゑ(恵)  を(遠)

    カタカナの語源

ア(阿)  イ(伊)  ウ(宇)  エ(江)  オ(於)
カ(加)  キ(幾)  ク(久)  ケ(介)  コ(己)
サ(散)  シ(之)  ス(須)  セ(世)  ソ(曽)
タ(多)  チ(千)  ツ(州)  テ(天)  ト(止)
ナ(奈)  ニ(仁)  ヌ(奴)  ネ(祢)  ノ(乃)
ハ(八)  ヒ(比)  フ(不)  ヘ(部)  ホ(保)
マ(末)  ミ(三)  ム(牟)  メ(女)  モ(毛)
ヤ(也)  ヰ(井)  ユ(由)  エ(慧)  ヨ(与)
ラ(良)  リ(良)  ル(留)  レ(礼)  ロ(呂)
ワ(和)  ン(无)

ヰ(井) ヱ(衛の簡体語?) ヲ(乎)
 (ヱ(衛の簡体語は常用漢字に含まれないので表示不能)