上海総領事館の職員が、チャイナ公安のハニートラップに引っかかって、無念の自殺をして果てたという、ショッキングなニュースが日本中を駆けめぐった。
これに対して日本政府はどこまで強硬に抗議をしたかは別として、この国の通例として、「知らぬ存ぜぬ」の一辺倒で、忘れやすい日本人の記憶が薄れようとした時、当時の上司であった総領事杉本信行氏の本著が上梓され、あらためてこの国チャイナの内情が赤裸々にされた。
実はこの書は、氏が末期ガンで死の床にありながら、渾身の力をふるって書き残した、いわば遺書であり、理不尽なチャイナ告発の書だといえよう。氏は悪名高き「チャイナスクール」の一員だが、彼だけか、それとも少数派の一人かは別として、われわれの平板的な認識を一変させる迫力、現地に密着した地道なODA活動や、強硬な主張を行った、タフネゴシエーターとして側面も見せてくれる。
ただ予想していたハニートラップの実情は、残念ながら出てこないのだが、それを補って余りある迫力のあるチャイナの実状告発と、「正しい付き合い方」について、ともすれば居丈高になりやすい日本の現状を、やんわりとだが抑えてくれている。
たとえば、「靖国」に対するチャイナの言い分にも触れながら、といって、逆にチャイナの圧力に負けて参拝中止をすれば、国のメンツを持たない国だと上げ済まれるので、絶対に中止してはならないと説く。
ただ同時に根気強、日本の戦後平和に過ごしてきた状況とか、私案としてだが、靖国が「日本民俗独特の宗教」であることを明確した上で、他の普遍的な宗教とは全く違う、日本人のみが自動的に氏子(うじこ)になるという「排他的な自然崇拝的な宗教である」ことを、世界のメディアに明らかにしていくことを提案している。このあたり安倍さんにもだが、特に谷垣さんに読んで欲しい。
本著では、チャイナの問題点として、「環境汚染と公害・水資源の枯渇とその汚染・森林破壊と砂漠化」を取り上げ、今後ODAの打ち切りや削減を言う前に、そうした課題の解決にシフトすることの重要さを強調している。
加えて興味を持たされるのは、国交が途絶えているバチカンとの国交回復で、それが実現すれば、普及を通じて辺地の窮状を世界に発信して、この国の実状を(ただ非難するのではなく、世界の援助と、この国の上層部に明らかにしていくことが効果的だろうとしている。
命を賭しての感銘の1冊、未読の方はぜひ購読を勧めたい。