大竹伸朗 著
集英社文庫
さまざまな印刷物や紙切れ・布切れを貼り付け、さらに絵の具を塗りたくるという行為を記録するスクラップブック帳―絵日記を長年にわたって作りつづけている大竹伸朗というアーティストを私が知ったのは、数ヶ月前のNHK「日曜美術館」でのこと。テレビの画面に移っている絵の具でゴワゴワになった画帳を見て、これが日記かと、びっくりしたものだ。
そんな、画家の事をもっと知りたいと思っていたら、彼の「視線」=「思考」が、ぎゅっとつめこまれた本に出会った。
照り付けられて上昇する気温、街に響き渡る1日5回コーランの詠唱、しつこいハエ、ラマダンでキレかけている現地のタクシードライバー…。日本とはかけ離れた環境の異国モロッコで、画家は、カスバの男になりきって、楽しんでいる。旧い街並みを徘徊し、普通の旅行者であれば目を背けて通り過ぎるような路上のゴミ・ゴミの集積場、汚れた壁に視線を向ける。興味が湧くと、色鉛筆が画用紙の上で踊る。現実と夢が交錯する。
本書を閉じたとき、ちょっとの日差しで暑がっている、この日本の夏がパラダイスに思えてきた。なんだかクーラーみたいなな本だ。
(哉)