« 雑感(10月) | メイン | 今月の写真 »

今月の言葉(10月)

君は船なり庶人は水なり

――荀子 

 この言葉は、中国の古い諺である。一読すれば、意味簡明である。君主と庶民の関係を説いたもの。
 荀子は、中国戦国時代の思想家。(紀元前二九八年?~同二三八年以降)生年、没年は不詳。著書二十巻三十二編の中の王制編九に書かれている。念のため解釈すれば「君主は舟であり、庶民は水。水は即ち、舟を載せ、水は即ち舟を覆す」―。庶民が安ずればこそ、君主も安泰であり、君主の苛政を戒めた言葉。今回この言葉をとりあげたのは、安倍政権への警鐘である。
 多くを語るまでもなかろう。理由はともかく民意を反映できず、さきの参議院選挙での自民党惨敗。与野党逆転から衆、参両議院の「ねじれ国会」の行方を杞憂してのこと。
 この言葉は、政権与党の自公、野党の民主両党にも言える。
 現在の国会運営は、テロ対策特別措置法延長、年金記録不備、政治とカネ、大臣の任命権問題など、国内外での大きな課題がある。この難局を私たちの「日本丸」は、どのように乗り切っていくのか? 安倍晋三首相の操舵範を見守るほかはないが、これまでの経緯からは不安も隠し切れない。
 ところで、古代中国には、荀子の書のほかに政治に関わる金言、名句がたくさんある。
「国は人をもって本となす。安ければ国安し」(潜夫論、準南子、書経など)―。
「民の欲するところは、天は必ずこれに従う」(左伝、書経)―。
「国を治むる者は、民を富ますをもって本となし、学を正すをもって基とす」(潜夫論)―。
「すくなきをうれえずして均(ひと)しからざるをうれえ、貧をうれえずして安からざるをうれう」(論語)―。
 中国五千年の歴史には、孔子、孟子、司馬遷、孫子などすぐれた思想家、歴史家、戦略家などが残した言葉がある。かっての毛沢東をはじめ共産主義国家の政治家を含め、現在の市場経済導入から近代国家をめざす政治家たちへの「遺言」ともいえる。が、そのままわが国の政治家への「提言」でもある。

(注)この文章は、九月の早い時期に執筆されたものです。

(風彦)