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文明法則史学800年周期説と日本(4)

縄文が日本を救う! (57)

縄文塾塾長 中村 忠之

縄文塾
 

 ここでもう少し、村山史学という「東西文明」の、時空を加えたDNA的コスモロジーを、古代に遡って紹介しよう。ご存じのように通常「歴史」とは、事件とか特筆すべき要素の多いところを厚く、そうでないところは省略して記述されてきた。

 3回に亘って紹介した、村山節(みさお)先生の『東西文明周期800年説』の総括を兼ねて、今世界を覆っている、(文明交代期に生じるという)大きな混乱の概要を俯瞰してみよう。

 表面的には、両文明の中間である、中東周辺における、
1.イラクでの泥沼的混乱
2.イスラエル対パレスチナおよびレバノンでの紛争
3.イランの核開発問題
4.アフガニスタンにおけるタリバンの復活反攻

 などに集約されるが、その陰でもっと大きな問題が表面化しつつある。

 それを列記すると、
1.アメリカの実力の相対的低下
2.ロシアのエネルギーをバックにした対外戦力と、プーチンの強権政治の危険性
3.「資源爆食怪獣(宮崎正弘氏命名)」チャイナのエネルギー獲得奔走
4.世界的規模の、温暖化/エネルギー危機/環境汚染の進行/砂漠化の進行と水資源枯渇の危機

 などなどが挙げられるだろう。

 まず「アメリカの実力の相対的低下」だが、共和党ブッシュ政権がイラクでの戦後経営の稚拙さが祟ってレイムダックになり、次回大統領選では民主党の大勝が予想されるが、この中東地区でのエネルギー確保が大きく頓挫した中で、イランの核開発問題に腐心して、北朝鮮問題での変節と弱腰が日本を失望させている一方、国内ではサブプライムローンの破綻で益々ドルの価値が下落の一途を辿っている。そこにはもはやパックス・アメリカーナを誇った栄光の姿はない。

 さてそれが、民主党になってそれが劇的に改善する保証はどこにもない。共和党ほどは露骨ではないとしても、この国の復活には、軍需産業の繁栄は欠かせない。かつてのソ連と違ってエネルギー資源を握ったロシアは、いまや公然とアメリカの地位を窺う気配を見せているが、戦争と言えばイランか北朝鮮ということにななるが、なんでもイラク爆撃というシナリオもちらほら聞かれるという情報があるようだ。

イラン空爆話の再燃 (田中宇の国際ニュース解説 (2007年8月28日) 

 一方ヨーロッパ文明の低迷には、北狄(ほくてき)ロシアの台頭は頭痛の種がある。エネルギー資源の大きな部分を新興ロシアに依存しなければ成り立たない苦悩が根底にある。EU内部でもだが、同非加盟国間においても総論賛成・各論反対という矛盾の露呈、移民との軋轢やテロの脅威、そして労働人件費の格差や人種的偏見、それに失業率の増大が拡大しつつある。

 いまやロシアは、冷戦敗北の後遺症を克服して、豊富なエネルギー資源(主として天然ガス)を武器に優位な対外戦略を着々実行中である。共産主義は崩壊したものの、プーチンの強引且つ強硬な姿勢、エネルギー政策の成功はロシア国民に強い支持を獲得している。

 一方「共産主義に市場主義を接ぎ木する」という、破天荒な政策を採用して驚異的成長を続けているチャイナは、(公称)毎年10%以上という急速な成長を続けているが、その反動として急速に資源大消費国に転落し、エネルギーを主体とした資源獲得になりふり構わぬ行動を示して、世界中に恐怖と顰蹙の輪を拡げ続けている。(なお、ここではBRICsと呼ばれる新興工業国群のうち、ブラジル・インドの動向は割愛する)

 では今のロシアおよびチャイナに弱点はないのか。決してそうではない。いずれも大きな課題を抱えていることは明白である。

 まずロシアだが、冷戦の破綻、ソ連邦の解体によって、かつての衛星諸国は次々と離反していった。その中で特にイスラム信仰国と、たとえば揃ってNATO(北大西洋機構軍)に加盟したバルト3国(エストニア・ラトビア・リトアニア)のように、かつてのソ連を踏襲するようなロシアの態度を快く思わぬ国々との間に、大きな摩擦を内在しており、先般も大きな列車爆発事件が頻発し、それに対しての暗殺の横行という、「負の連鎖」が後を絶たないという悩みを抱えている。

 おそらくプーチンは大統領の任期が切れた後も、強圧的な院政を敷くはずだが、パイプラインの敷設を中心にしたエネルギー政策は、いつ引火してもおかしくない危険をはらんでいることは想像に難くない。しかも最近、ロシア国内における新興富裕層の拡大と裏腹に、低収入層の増加は過激なナショナリズムとなって、これも大きな火種になろうとしている。

 順風満帆に見えたチャイナ経済の方はどうか。ご存知のように、ここ最近世界中で有毒・有害製品が数多く発生して問題化し、中共政府は、その対策に躍起になっているが、「安かろう 悪かろう」という領域を遙かに超えたこの国のアン・モラル性が今後も続くとしたら、その経済的地位も揺るぎかねないだろう。

 今や貿易総額でアメリカに次いで第二位にのし上がり、近いうちに第一の貿易国になると豪語はするのだが、なにしろ国民の平均所得が、アメリカの27000ドルに対して1000ドルという極端な格差は、この国の実情を如実に物語っている。

 チャイナの急速な経済発展が生んだ豊富な外貨は、内に沿岸部(都市)と内陸部(農村)の極端な所得格差を生みながら、それを貧困層の救済や、後述環境破壊対策に用いることなく、飽くなき「資源爆食怪獣」(宮崎正弘氏の命名?)として、外に向かって浪費を拡大しているのが現状である。

 この国の問題点は山ほどあるが、最大の課題は党幹部による汚職と、それに関連した手抜き工事の続発であろう。先日工事中に崩壊した「湖南鳳凰是沱江大橋」には鉄筋が一本もなく、しかも割れ口には砂利ばかりでセメントらしきものが見られないというひどさで、わずか9ヶ月で、実に6つの橋が崩壊したと言うから話にならない。現在世界各地でチャイナが絡んでいる工事が多いのだが、大惨事の発生が大いに懸念されるところである。

 また最近話題になっているのは、資源・エネルギーの枯渇よりも、むしろ「水資源の枯渇」である。来年の北京オリンピックで、空気の悪さ・食品の安全性と共に、水の問題で開催を危ぶむ声が大きいほどである。識者の中には、6年後の上海万博はおろか、まず北京オリンピックさえ、無事開催出来るかという声さえも聞こえるのだが、さていかがなものか。

 両国に絡む日本にだが、個々に見られるのは、外交下手というよりもむしろ無外交政策ともいえる日本の「資源・エネルギー対策」のまずさであり、また「譲歩・謝罪・沈黙(黙認)」という、外交上のタブーを遵守し続ける姿勢である。「言うべきは言う」という、毅然とした外交姿勢の復活と、「日本ではこんな事が出来る」という自己主張が肝要であり急務である。たとえば、日本の持つ、省エネ・水問題、それに環境改善など、両国が苦手としている課題に特化して両国との関係を深める努力が必要となる。

 宮崎正弘氏によれば、両国のエネルギー効率は、日本を100とした場合、<チャイナ870/ロシア1800>という、驚くべき低効率だという。(ちなみにインドは920/アメリカ300/EU170 資料はIEA))

 両国の課題、(と併せ、過重な目標を押しつけられた京都議定書のいかがわしさ) がいかに大きいかがわかるというものだ。 

◎参考文献
 宮崎正弘著 『世界資源新戦争』 (阪急コミュニケーションズ)>