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蜘蛛の糸は必ず切れる

諸星  大二郎 著   株式会社 講談社 発行

 背すじも凍るような恐怖ではなく、じっとりと汗ばむような恐怖でじわりじわりと責めてくる。もう読むの止めたいのに、指が吸い付いたように頁を繰るのを止めてくれない。「こわい」+「せつない」+「おもしろい」。
 著者の諸星大二郎氏は漫画家で、本書は二冊目の小説集(一冊目は「キョウコのキョウは恐怖の恐」)。漫画家だからか、文章がビジュアルでわかりやすい。もっとも、彼の漫画は、文章の量も多いし、着想の面から見ても文学的な傾向があるので、小説の執筆は自然の流れ。漫画と小説がクロスオーバーする作家といえるだろう。
 いつ来るかわからない船を待つ人々の心情を粘っこくと描き込んだ「船を待つ」、不思議なOLが不可思議な生活を語る「いないはずの彼女」、同窓会で徐々に暴れて行く男の秘められた過去(「同窓会の夜」)、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の大胆な変奏曲「蜘蛛の糸は必ず切れる」。四つの中短編が収められた本書は、人の心の闇にたらされた銀色に光る蜘蛛の糸かもしれない。
 蜘蛛の糸を表現した線が表紙~扉~目次と続く等、しゃれた装丁も本書の魅力。

(哉)