「森は海の恋人」 ――畠山重篤
「緑化運動は平和への一里塚」 ――風彦
青葉、若葉のシーズンである。この季節になると気になるのが、原爆被爆樹の柳。被爆直後、七十日は草木も生えないと言われた廃墟から生き続けていた柳の存在。あの日の広島市街地を流れる京橋川に架かる鶴見橋の東詰めに残る。一時は枯死の危篤状態だったが、いまなお被爆六十三年の歳月と風雪に耐えて蘇っている。主幹のケロイドは、セメントの処置を受け、鉄柱に支えられる老樹となりながらしなやかな枝には青葉が川風に靡いている。植物の生命の逞しさを知り、命の尊さを学ぶ。広島の町は、廃墟から幾多の犠牲と変遷の末、緑豊かな美しい平和都市として再生。世界に「平和アピール」を訴え続ける。
「緑」は、まさに平和のシンボルではないだろうか。以前、ソ連のガガーリン宇宙飛行士は「地球は青かった」と言い、同じ宇宙飛行士、向井千秋さんは「地球は美しい星」と表現したが、現実の地球には、国境があり、争いが絶えない「醜い星」でもある。
中でも中東地域。テロ行為をめぐる「戦争」が続く。「戦争」は山野の「緑」と言わず街を破壊。多くの人間を殺傷する。「戦争」だけではない。人間によるアマゾンなどの熱帯密林の伐採による行為を含め、大規模な開発は、深刻な地球温暖化を。もちろん工業優先の企業活動なども一因であろう。
地球温暖化とは、「化石燃料の消費で生ずる二酸化炭素などの温室効果によって、全世界の平均気温が長期的にみて上がっていく現象」(広辞苑)であるが、森林(植林、緑化)によって二酸化炭素の弊害が解消されるというわけである。が、先進国、開発途上国とも国同士のエゴによりその対策は未解決である。
過日、広島市中央図書館で興味ある本をみつけた。「森は海の恋人」(畠山重篤著=北斗出版)である。著者は、宮城県気仙沼で牡蠣養殖業を営む人。牡蠣は植物プランクトンなどを食べて育つことに着目。山(森)との自然環境との関係から海に注ぐ川の上流への植林、緑化活動に取り組み、その成果を実証。大漁旗を掲げる漁民と山村の人との連携で山地の植林、緑化運動を実践しているそうだ。
牡蠣といえば、広島の海の幸。畠山さんは十二年前、崇徳学園での招きで太田川上流の山地での植林の大切さを説き、それがまた地球温暖化対策への一助にもなると訴えた。
「森は海を海は森を恋いながら悠久よりの愛を紡ぎゆく」(宮城の歌人・熊谷龍子)
畠山さんは、この一首が好きだという。
そこで私の蛇足の一句を。
―幸せや緑を紡ぐ人と人―
(風彦)