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「硝子戸の中」、「調査されるという迷惑」

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「硝子戸の中」

夏目漱石著 株式会社岩波書店 発行

「調査されるという迷惑」

安渓遊地著 みずのわ出版 発行

 かつて、病気のため書斎(硝子戸の中)にこもっていた夏目漱石は、そこにやって来る人たちの話・伝聞した情報をもとにして、過去の出来事や自分の境遇に思いをはせたエッセイを書きました。話題は他人の親族の消息、しかも大正時代に書かれたものなのに、なじみの店で友人の話を聞いているような安らぎを感じるのはなぜでしょう。作者が「漱石」だからでしょうか。新聞連載ということで、短めの章だてで読みやすく、元祖「すべらない話」とでもいった趣です。もっとも、声を立てて笑ってしまうような種類の話ではありませんが。
 ところで、いま手に取っておられる、このささやかな印刷物の裏面は「舟入散歩」という企画になっています。これは、社内にこもりっきりで仕事をするのではなく、外に出て地元と積極的に関わって、視野・仕事の幅を広げようとする試みの一つです。言わば「硝子戸の中」とは逆の行き方です。
 その取材中、あらかじめ記事にまとめやすいカタチを思い描いて、人の話を聞くことがあります。これはマスメディアのやらせにつながる危険な考え方かもしれないと、なんとなく感じてはいたのですが、安渓さんのブックレットを読んで、あらためて身の引き締まる思いがしました。

(哉)