「ペット・サウンズ」
ジム・フリージ 著/村上春樹 訳 株式会社新潮社 発行
60年代中盤、イギリスのビートルズと人気を二分していたアメリカのバンド、ビーチボーイズ。本書は、そのリーダー、ブライアン・ウィルソンの音楽と半生を、作家ジム・フリージが回顧して綴ったもの。
本書のタイトル「PET SOUNDS」は、ビーチボーイズの同名のアルバムから採られている。ビートルズの「Sgt.Paper's Lonly Heart Club Band」の先駆となる刺激に満ちた作品で、ロックの最高傑作アルバムと呼び名も高い。しかし、それは、ビーチボーイズの作品というよりも、リーダーであるブライアン・ウイルソンがスタジオミュージシャンを指揮して作り上げた、ソロワークに近いものであった。しかし、そのとき彼は、心身ともに危機的な状況に直面して苦しんでいた。
ドラッグに溺れ、心身に異常をきたしながらも、ブライアンは、なぜ、「PET SOUNDS」を作り上げねばならなかったのか。スタジオにこもって自分の音を彫琢する、神に選ばれたミュージシャンの生き様に、読むものは圧倒されるだろう。
「嫉妬」
アニー・エルノー 著/堀茂樹・菊地よしみ 訳 株式会社早川書房 発行
いったん「嫉妬」という感情にとりつかれたら、やっかいだ。その感情が思考を占領し、行動を規定する。フランスの作家らしく乾いた文体で、そんな状況が描き込まれた本書、頁を繰る指がひりひりする。「毒をもって毒を制する」とは本書のためにあるような言葉だ。
(哉)