「職人学」
小関智弘 著 株式会社講談社
小関さんは、約50年にわたって旋盤工として働きながら、作家としてもご活躍され、町工場を取材したノンフィクションや小説を書いてこられた方。本書は、氏のお仕事のエキスのような内容になっている。見て、聞いて、実践されてきた人だけが書ける、現場で働く者の心意気と熱い血の通った『仕事論』・『人生論』といえるだろう。
「機械にニンベンをつける」とは、小関さんがよく書かれることの一つだ。一つの仕事が工夫次第でやりやすくなり、生産効率が高まる。不可能に思えた仕事が、あっけなくできてしまう。そんな意味のことを「職人語」で表現したものだ。
新しい技術が導入されて、一見時代遅れの用済みなものと見なされそうな技術が、経験を積んだ職人の手によって現代のハイテク技術を支えているという例は数多い。また、若い世代の新しい技術と職人たちの経験値がコラボレートして、すばらしい物が生み出される場合もある。町工場で金属を加工したことのない者にも、小関さんの文章は説得力を持って迫ってくる。
また、氏が取材の過程で再会した、かつて共に働いた仲間たちの積み重ねてきたもの失ったもの…。「人生」という地層の断面を、小関さんの筆は鮮やかに描き出す。
(哉)