『竹取物語(全)』『行動することが生きることである』の2冊 2010年09月

ビギナーズ・クラシックス日本の古典
竹取物語(全)

青木 誠一郎 著 / 角川学芸出版 発行

taketori.jpg

 最初に触れたのは幼稚園の時。次に触れたのは高校の古典の授業。先月本屋でたまたま見つけ、懐かしく思い購入した。古文と現代語訳、コラムを交えて書かれているので、時代背景もわかり勉強になる。竹取物語の今までとは違った見方が出来るような形になっている。自分も読んでみて今までとは違った見方が出来た。「かぐや姫の良さはどこなんだ?」と感じた。見たことのない相手に自分は求婚出来ない。自分は最初に出てくる野次馬の一人にしかなれないだろう。現代だと顔も見たことのないメール相手に告白するようなものだろうか。
 かぐや姫と聞くと、子供の時には悲しいお話のように感じていた。成長した分、考えていろんな角度から読むことが出来る。

 

生き方についての343の知恵
行動することが生きることである

宇野 千代 著 / 集英社 発行

koudousurukoto.jpg

 人生は凡てのことにのぼせなければならない…のぼせていると何事をするのにも、することに勢いがつく―。のめりこむことを“のぼせる”と表現する所に素朴さを感じる。
 この本は著者が91歳の時に書いた1冊。波乱万丈の人生経験から紡ぎ出される言葉の数々に、誰もが頷くこと間違いなし。最近メディアでも著者自身の人生にスポットを当てた特集番組も放送され、話題を呼んでいる。4回の結婚に至る数々のエピソードも有名であるが、98歳で亡くなった今も尚、多くの人々に支持されるのは著者の生き方に今を生きるヒントがあるからだろう。行動しないことは何もしないことと同じ。迷い立ち止まっている人も今日から行動を起こしていこう! 

今月の気になる本

編集者の仕事 2010年08月

柴田光慈 著
株式会社新潮社  発行(新潮新書)
 

 編集者の仕事とは、良い本を作ること。良い本とは読みやすい本であり、本の読みやすさは編集者の技量によって決まるという。文字のポイントや本文の余白の指定、表記の確認など、編集者が担当する部分は必ずしも目立つ部分ではないが、編集者がいかに気を配っているかが、本の出来を決定的に左右するというのだ。読書中、何となく読みにくい本だと感じたら編集者の手が行き届いていない証拠。
 当社は自費出版のお手伝いをしており、私も担当したことがあるが、基本的な知識をはじめ編集に対する姿勢等、自分の仕事に多々反省すべき点があることを悟った。
 本書は、編集者がクリアするべき点が網羅され、わかりやすく説明されている。新潮社の編集者であった著者だけに説得力がある。それは、出版という歴史の中で積み重ねられてきた編集という仕事のたどり着いた地点を示したものであるといえるものだろう。
 本作りには関わりのない一般の読者にとっては、本書を読むことによって、手もとの本がどのように工夫して編集され作られているか味わう楽しみも生まれるはずだ。
 また、著者が担当したいくつかの本の楽屋裏も語られており、楽しい。(哉)

今月の気になる本

桜天蓋 2010年07月

妙義山倫氏(田村倫子) 著
有限会社 文化評論 発行
 

  繊細ゆえに自分の芸術を見失うのをおそれ、田舎で隠遁生活を送っている画家、西洞惟也。彼のもとに、大学時代の恩師が訪ねて来るところから、このお話は始まります。恩師の語った、「幾年にもわたって生者に訴える、怨念のような死者の苦しみ」にまつわる話に、惟也は心を奪われます。恩師と別れた後、旅に出た彼は、旅の僧侶と出会い、まさに「幾年にもわたって生者に訴える、怨念のような死者の苦しみ」を思い知ることになります。
 現代から過去へ、過去から再び現代へ。日常から逸脱した幻想的な体験を通して、主人公の惟也は、自分の進むべき道を発見する…。変転する時制を読み解きながら、頁を繰っていくうちに、日常とは別の時間の流れ作品=著者の精神世界に取り込まれていることに気づくでしょう。
 何度かの打ち合わせでご一緒した著者の田村さんは、幻視者というか、不思議な雰囲気を醸し出している方。絵のお仕事をされ、本書の表紙の絵も田村さんご自身の筆によります。
 [自費出版本]→[お金を出しさえすれば誰でも出版できる]という図式が、多くの人の頭に浮かぶかもしれません。本書は当社から自費出版された本ではありますが、編集に関わった者の一人として、上記のような図式では定義することのできない本であると思っています。(哉)

今月の気になる本

広告  人はなぜ、再びものをつくりはじめたのか? 2010年06月

発行:株式会社博報堂
 

 ウラが白いチラシを何枚か折って、厚い紙でくるみ、ホッチキスで留める。表紙に、色紙を貼り付ける。野暮ったいが、自分なりに愛着のわくノートになる。こんなことに夢中になる自分も、本書のテーマである『生産する生活者』かもしれないと思う。
 お気に入りのノートができると、人に見せたくなる。それを使いたいと思ってくれる人はいるだろうか?
「プロとは、「依頼がある人」のことです」と、作詞家の秋元康が書いている。『つくる』という行為と、『プロか、否か』の問題は、くっついているらしい。
 「好きだから」・「ひとりで」・「社会現象を」・「企業や組織と一緒に」・「みんなで」・「新しいしくみ」を「つくる」…。『生産する生活者カタログ』という記事で紹介されているのは、プロなのか、プロを越えたアマチュアなのか判然としない人たちも多い。しかし、その曖昧さが最大の魅力。記事を読んで、そう感じた。
 この季刊誌での若い論者たちの議論を読むと、『何かつくりたい』、『消費するだけでは飽き足らない』と思う人たちがことさら増えて来たというよりも、生活者が生産者でもあるということにこだわり、それについて議論される傾向が増して来たとのではないかという気もする。
 しかし、そんな理屈を抜きにして、たくさんの美しい写真が掲載された本書は眺めているだけで楽しい。
『つくって発信する』ことについて、思考と感覚が刺激される『やわらカタい』雑誌だと思う。(哉)

今月の気になる本

広島の復興をたどる写真展「町・人・てんてん」 2010年04月

編集・発行:広島市市民局文化スポーツ部文化振興課
市政資料登録番号:広C3-2009-412  

 広島の復興をたどる写真展「町・人・てんてん」と銘打たれた、広島市制施行120周年・広島平和記念都市建設法60周年記念の写真展(2010年2月17日〜3月22日、広島市各区の文化センターを巡回)で販売された写真集。江波中学校や段原中学校で教鞭をとられた大壇徳一氏が昭和から平成にまたがって撮りためられた膨大な写真を中心として編集されています。
 巡回展に行った時には、年配のご夫婦連れらしい方々ばかりか、若い世代のカップルも数多く来ておられたように思いました。年齢に関係なく、それぞれの方々が自分史と重ね合わせて感慨深げに写真を眺め、同伴の方と懐かしい昔の思い出を語り合っておられる姿が印象的でした。
 現在の感覚ではあり得ない場所(マツダスタジアム近くの平和橋あたり)を走っている機関車、まだ舗装されていない国道や繁華街の道、アーケードのない本通、埋立前の海田湾にカキヒビが立っている、本川川面になだれ落ちるように建っている木造の住宅、セピア色に染まった湯来温泉…。
 昭和のノスタルジーをかきたてられるだけでなく、数十年後、今私が住んでいる町はどのように変貌しているのだろうという空想が膨らむ写真集です。
 それにしても、昔の広島市の空は、ずいぶん広かったんだなあ…。(哉)

今月の気になる本

地衣類のふしぎ 2010年03月

柏谷 博之 著
ソフトバンク クリエイティブ株式会社 発行

 『地衣類』という生物は、コケとよく似ており、「○○ゴケ」というような名前を持つものが多いので混同されやすいらしい。しかし、コケは単独の生物で緑色植物に属し、地衣類は菌と藻の共生体で菌類に属する。本書を読むまで、木でもなく草でもなく地面や壁にへばりついている「あれ」は、全部コケだと思っていた。外で見ると地味な地衣類も、本書に掲載されている接写された拡大写真を見ると、かたちも変化に富んでおり、美しい。
 それにしても、これまで地衣類とかコケなど目もくれたことのなかった私が、なぜ、この本に惹かれたのだろうかと自問してみた。たぶん、書店で手に取り頁をめくったとき目にとまった『共生』という言葉に心をとらえられたのだと思う。
 「菌類は地衣体の中で安定した生活の場と水や無機物を藻類に与え、代わりに藻類が光合成でつくる栄養(炭水化物)を得ている」(本書より)
 自分と会社・地域社会の関係とオーバーラップするような気がした。ここに、私にとって重要な示唆を含んでいるような気がしてならない。(哉)

今月の気になる本

インド夜想曲 2010年02月

アントニオ・タブッキ 著 須賀敦子 訳
株式会社白水社 発行

 『あの小説を読みかえしたい』と頭の隅で思いつつ10年以上経ってしまった。ネットで探そう。PCの前に座ったら検索してみようと思いつつ、また日が経つうち、町のいつもよく行く書店の棚で見つけた。
 なぜ、私の心の中で、浮きつ沈みつしながらも、引っかかっていたのだろう。その理由を探るように本書を開いた。
 『失踪した』友人の所在を求めて、インドを放浪する男が主人公。彼が、ポンベイ、マドラス、ゴアといった町で出会う人々は、現在のインドという国を体現している人たち。タクシードライバー、娼婦、牧師、占いをする少年、ホテルのボーイ…。
 第一人称で語られる文章は、謎めいていて、推理小説のような感じもするが、読みながら、手に汗を握る…という類いの小説ではない。明確な解決が示されるわけでもなく、そもそも問いからして読者に取っては曖昧模糊としている。最後の頁までたどり着いたら、おぼろげながら、作者の意図が見えるような気もした。しかし、それが正しいかどうかはわからない。
 主人公の目に映る情景は詩的で美しい。たとえ、そこが貧富生死がごった煮となった場所であり、そこにいるのは寂しい人間ばかりであるとしても。
 初めから終わりまで、ずっと夢を見ているような感じ。それを味わいたい。この小説が、密やかに私の心の片隅に残って来た理由かもしれない。「インド夜想曲」というタイトルは、まことに適切だと思う。同じ著者で、「遠い水平線」という本もあり、これも同じように淡く長く私の心に留まり続けている。(哉)

今月の気になる本

この世界の片隅に 上・中・下 2010年01月

こうの史代 著 株式会社双葉社 発行

「江波の出ている漫画があるんよ」
 その江波在住のKさんが興奮した声で教えてくれた。
 本を開いてみて、うなずいた。第二次世界大戦前、中、そして戦後に少しまたがっているといった時代のお話だが、江波(現在、広島市中区内)から呉市に嫁に行った「すず」という女性が主人公。作者は、話題の漫画『夕凪の街 桜の国』を描かれた方だ。
 上巻の2話目に、子供時代のすずが、草津(現在、広島市西区内)の親戚から江波の自宅に干潟を歩いて帰る様子が描かれている。現在では広大な埋め立て地が広がり、海岸線が沖に出て、さらにコンクリートの護岸で固められ、干潟の景色など望むべくもない。
 また、すずは、海苔を洗ったり干したりする作業を手伝ったりしているのだが、そんな光景も現在は見ることができない。本書を教えてくれたKさんがグッときたわけもわかるような気がした。もちろん私も、グッときた。著者の略歴を見ると、私よりもお若いのに、現在は幻となってしまった情景を見事に再現されており感心した。
 それにしても、登場人物、とりわけ主人公のすずがとても魅力的だ。清純で、まっすぐで、夢見がちな、少女のような若い妻。夫の周作も、おとなしいけれども男らしい性格。ひとつひとつの絵、セリフから、若い夫婦がお互いに相手を想っている気持ちが伝わってくる。すずと周作の出会いは、伏線がきいており、途中まで読んだところで、「なるほど!」と思わず手をうった。
 呉の大空襲や原爆など悲しい出来事に見舞われるが、優しいタッチの絵と、登場人物たちの醸し出すしみじみとした雰囲気に、読むものは救われる思いがするだろう。(哉)

今月の気になる本

クリスマス・カロル 2009年12月

ディケンズ 著 村岡花子 訳  新潮文庫

 金儲けのことしか頭になく、困っている人に一銭も恵んでやろうなどと思っていない、嫌われ者の老人スクルージのもとにかつての相棒マーレイと3人の幽霊が現れた。スクルージは、幽霊たちにつれられて、過去・現在・未来の自分の幻影を目の当たりにすることになる。
 子ども時代、ひとりぼっちで過ごしていた自分。青年時代、守銭奴への道を歩み始めたスクルージと、それに愛想を尽かした婚約者とのやりとり。現在、自分をクリスマスパーティーに招待してくれた甥とその家族の中で交わされる自分の噂。そして、未来。ケチで冷酷な男として死んで行った自分のことを悪し様にけなす人々。見たくもない幻を、幽霊たちと見ていくにつれて、スクルージの心に変化が起こる。固く氷のように閉ざしていた心が、自分以外の人間に対して開き始めたのだ。そんなストーリーだが、出現する幽霊のイメージや、幻想的なシーンは150年以上も前に書かれた小説とは思えないくらい、特撮的な表現だ。現在、ディズニーの映画として公開されていることもうなずける。
(クリスマスは)「親切な気持ちになって人を赦してやり、情けぶかくなる楽しい時節ですよ」と、スクルージの甥が言う。
 私は、スクルージほどお金への執着心はないが、引きこもりがちな性格なので、もしかしたらクリスマスの晩、幽霊の訪問をうけるかもしれない。怖くもあり、訪ねて来てほしいような気もする。(哉)

今月の気になる本

葛飾ブランド 葛飾町工場物語 2009年11月

発行:葛飾区/東京商工会議所 葛飾支部 

0911katsushika.jpg

 東京都葛飾区は、町工場集積している場所であり、地域の技術のすばらしさを紹介していこうと設けられたのが「葛飾ブランド」。本書は、その中で選りすぐられた10社を親しみやすい漫画で紹介したものです。メッキ加工、極薄ゴムシート、ツインメガホン、ペンクリップ、メガネフレーム、セルロイド雑貨、ケーブルをまとめる器具、美術館の展示ケース、六角ナット。様々な物が、葛飾の町工場から生み出されていることがわかります。JGASの記事でも紹介した布地への染色の会社も「葛飾ブランド」です。当社が所在している舟入にも結構工場があります。本書に刺激され、「舟入ブランド」というものがほしいなと思いました。 

(哉)

今月の気になる本

2 3 4 5 次の10件