不思議なほどうまくいく人 2007年12月

メッテ・ノルガード 著
柴田昌治 訳 三笠書房発行

 会社や学校で浮いているなと感じたときは、アンデルセンの「みにくいアヒルの子」のストーリーを思い出しましょう。みんなからばかにされ、変なアヒルだと思われていた主人公は、ある日水面に映った自分の姿を見て驚きます。そこには真っ白な美しい鳥が自分を見つめ返していたのですから。
「自分の能力を低く見ることは、自信を持つことよりも簡単です。だから、人は自分の本来の力を100%出し切れないのです」と著者は言います。
「失敗するのはかんたんです。学ぶのをやめればいいだけ。しかし、大きな成功を生むには、たくさんの小さな努力が必要です。毎日少しずつの発想の転換が素晴らしい実りをもたらします」とも。
 純粋な心は、「みにくいアヒルの子」の白鳥のように、いつかきっと空高く羽を広げるときが来るでしょう。本書のくれたメッセージの数々を読んで、自分も白鳥になる日が訪れるかもしれないという勇気が湧いてきました。

(哉)

今月の気になる本

じゃがいもの花 2007年11月

池 田 風 彦 著 (「今月の言葉」執筆者)
題字 :石原千穂子 挿絵 :折本千代子

 本書は、このタニシインフォメーションに連載中の「今月の言葉」2003年の3月から2007年5月までの50本の文章をまとめたものです。その季節その月にちなんだ話題が綴られたコラムをまとめて読んでみると、風彦氏の博識に驚かされます。氏独特の飄々とした言い回しで語られている文章は、風彦流の歳時記、文明批判。B6(12.8×18.2cm)のハンディな本書ですが、視野の広い本なのです。
 それにしても、このインフォメーションの作成に関係している者として、「じゃがいもの花」を発行させていただけたことは、とても感慨深いものがあります。毎月のインフォメーションの作成は、まず風彦さんからファックスで送られてくる「今月の言葉」の原稿を入力する作業で始めてきたわけですから。

(哉)

今月の気になる本

オトナの片思い 2007年09月

石田衣良、他 著
角川春樹事務所 発行

 タイトルが良い。本書は短編を集めたアンソロジーですが、この「オトナの片思い」という題名が、本書の中で最もよく出来た作品じゃないかと思います。学校の先生が見たら、即座に、〔大人の片思いと子供の片思いの違いを200字以内で述べよ〕という設問が浮かんでくるかもしれません。
 書店に平積みしてある本書を手にとった人は、表紙をじっと見つめながら考えるにちがいありません。『あの時の私の片思いは…』思わず携帯を取り出して、彼の電話番号を表示させてみようとするけれども、残念、ない。それは、あの日あの時、覚悟を決めて消去のボタンを押してしまったのだから。
 日本の人口は127,767,994人(国勢調査 平成17年10月1日)、世界の人口は2007年7月現在の推計で66億人。地球上で、これだけの人が、この瞬間にも、だれかに片思いをしてそれが満たされず切ない思いをしている(赤ちゃんだって、欲しいときにおっぱいがないことだってあるでしょ)、地球ってなんていとおしい星なんでしょう。そんなせつない星「地球」だからこそ生れた本だと思います。 

(哉)

今月の気になる本

カスバの男 モロッコ旅日記 2007年08月

大竹伸朗 著
集英社文庫

 さまざまな印刷物や紙切れ・布切れを貼り付け、さらに絵の具を塗りたくるという行為を記録するスクラップブック帳―絵日記を長年にわたって作りつづけている大竹伸朗というアーティストを私が知ったのは、数ヶ月前のNHK「日曜美術館」でのこと。テレビの画面に移っている絵の具でゴワゴワになった画帳を見て、これが日記かと、びっくりしたものだ。
 そんな、画家の事をもっと知りたいと思っていたら、彼の「視線」=「思考」が、ぎゅっとつめこまれた本に出会った。
 照り付けられて上昇する気温、街に響き渡る1日5回コーランの詠唱、しつこいハエ、ラマダンでキレかけている現地のタクシードライバー…。日本とはかけ離れた環境の異国モロッコで、画家は、カスバの男になりきって、楽しんでいる。旧い街並みを徘徊し、普通の旅行者であれば目を背けて通り過ぎるような路上のゴミ・ゴミの集積場、汚れた壁に視線を向ける。興味が湧くと、色鉛筆が画用紙の上で踊る。現実と夢が交錯する。
 本書を閉じたとき、ちょっとの日差しで暑がっている、この日本の夏がパラダイスに思えてきた。なんだかクーラーみたいなな本だ。 

(哉)

今月の気になる本

デザインのひきだし2 2007年07月

グラフィック社
2007年6月25日
初版第1刷発行

 何やらきれいでかわいらしい「モノ」が好きです。とくに紙をゴショゴショッといじって作った、「ほぉー」っとうならされるような「モノ」。最近では、街角で手渡されたauの「決める夏。」という広告。これは、開くとA4のチラシですが、うまく折りたたんであって、サッカーの審判が着ているシャツのような形になっているので感心しました。こんな私みたいな性格でなくても、本書を開けば、そこに紹介されている数々のアイテムに目を奪われるはずまちがいなしです。「ほぼ日」グッズや各社の工夫を凝らしたノベルティーグッズがいっぱい載っています。それらを参考にして、記載されている業者にたのめば、自社をグッとアピールするアイテムを製作することも出来るでしょう。
 クラフト紙はただの物を包むだけの紙ではない。クラフト紙の製造過程から、一般的に包み紙として認識されているクラフト紙を書籍の本文にまで採用したデザイナーの談話。
 半分空気で出来ている紙とは。「吾輩は猫である」を今の感覚で装丁したらどんな本ができあがるのか。鉛筆デザインプロジェクト、などなど、興味津々の記事が目白押しです。
 ところで、ここ数年来、未経験の活版印刷に憧れ続けてきた私が、最も心引かれたのは、「巻末特集 まだまだ現役 活版印刷」という記事です。手動式のコンパクトな活版印刷機FOR SALE!とのこと。即、本文中に記載されていたURLにGOしました…。ああ、心がズキズキ痛む、疼く。女性でも移動させることが出来るほど軽量で、卓上にポンと(でもないかもしれないが)置けるらしい。うちの父親が乗っているトヨタのヴィッツより安い。ローンを組めば何とかなるかも…。清水の舞台が近くにあれば、思い切って飛び降りてしまいそうです。
 「あの人は引き出しが多い」という表現があります。経験豊かで、アイデア豊富な人=引き出しの多い人なわけですが、本書を閉じたとき、あなたの「デザインのひきだし」(の中味)は、少し増えていることでしょう。 

(哉)

今月の気になる本

図書準備室 2007年06月

田中慎弥 著
新潮社 発行

 本書には中篇が2作収められている。
 表題にもなっている『図書準備室』は、三十歳を過ぎてもなお今まで一度も働いたことのない青年が、自分の心境を語るという形の小説。法事で会った伯母に、自分がなぜ働こうとしないのかを話し始めるのだが、主人公の話す内容は意外な方向に進んでいく。
 もう一つの『冷たい水の羊』は、同級生たちから過酷ないじめを受けている中学生の少年の心の動きを表現した作品。後半は、いじめられている少年だけではなく、いじめている側の少年・いじめを傍観している者の立場にも立ち、複数の視点からそれぞれの心理を描写している。いじめのシーンの描写は具体的で、そこだけとばして読んでしまいたくなるほど強烈だが、この具体的な描写によって主人公の少年の独特に醒めた心理が、より強調される。
 本書を読んで、一般的に「弱者」と決め付けられてしまう立場の人間にも言い分があり、それは表層的な解釈では捉えきれないほど膨大な心的エネルギーを持っているのだと、あらためて考えさせられた。 

(哉)

今月の気になる本

ありふれた魔法 2007年05月

盛田隆二 著
光文社 発行

 主人公は、44歳にして銀行の支店次長のエリート。もちろん妻も子供もいます。最初、この主人公のことが、独身(しかもこの本の主人公より年上!)の私の目にはかけ離れた存在に映りました。しかし、読み進めていくうちに、本書のリアリティに富んだ文章にぐいぐいと引きずり込まれ、いつのまにか融資先の状況について不安にかられたり、無断欠勤を続けている部下のことが気にかかったり、ひいてはそれらが自分の昇進の道を脅かすのではないかと気を揉んだりしてしまうといったような、物語の世界と現実の世界が重なるような感覚を体験しました。メインストーリーは、主人公が「ありふれた魔法」にかかり、酔いしれ、さめていくまでの経緯を描いたものと要約できますが、はたしてその「ありふれた魔法」とは…。私も主人公のように「ありふれた魔法」にかかってみたいものです。
 ところで、ここで、秘密のクイズに移行します。本書のタイトルになっている「ありふれた魔法」ということばは、J-POPの歌詞の一節からとられたものです。その曲名と演奏しているバンド名をお答えください。正解された方2名様(早い者順)に手作りの秘密のプレゼントを差し上げます。 

(哉)

今月の気になる本

オテル モル 2007年04月

栗田有起 著
集英社 発行

 「オテル・ド・モル・ドルモン・ビアン」。そのオテル(ホテル)のフロントデスクの募集条件は、夜に強く、孤独癖があり、いらいらしないこと。一風変わった面接にも見事に合格した「本田希里」は、さっそく次の日から働くことになる。
 地下13階建て(?)のこのオテルは会員制契約型宿泊施設であり、日没から日の出までの滞在を原則とし、最高の眠りと最良の夢を提供することを目的とする、何とも不思議極まりない職場であった。さらに、希里の複雑な家庭環境が、この物語をいっそうややこしく(おもしろく)している。奇妙な感覚の中にユーモアがちりばめられ、ずっと読んでいたい気分にさせられる。春の陽気でねむたくてしかたないこの季節にぴったりのストーリーともいえる。
 言うなれば現代人の悩みの一つである「眠り」が最大のテーマであろう。毎日ぐっすりの人も、眠れなくて困っている人も、この本を読んでオテルを体験してみては? いい夢が見れるかも…。

(北)

今月の気になる本

知らずに他人を傷つける人たち モラルハラスメントという「大人のいじめ」 2007年03月

 香山リカ 著
KKベストセラーズ発行(ベスト新書)

「モラルハラスメントとは、ことばや態度で繰り返し相手を攻撃し、人格の尊厳を傷つける精神的暴力のことである」

 人間関係激突の二大空間、家庭と職場。ここでは誰でもモラルハラスメント(モラハラ)の被害者あるいは加害者になってしまう危険性が潜んでいます。
 会社で身を粉にして働いて給料をもらってきているのだから十分自分の責任を果たしていると考えているお父さん。自分以外の8割の人は会社の利益に貢献していないと考えている超エリートビジネスマン。あなたたちはモラハラ加害者である可能性大です。
 主人の言うことはごもっとも。私の努力がいたらないせいで、聞き分けのない子に育ってしまったと一人で悩んでいるお母さん。自分なんか、仕事が遅いないからみんなにバカにされてもしかたない、転職しようかなと思っている社員さん。あなたがたは、まさにモラハラ被害者。
 奥さんの相談に真摯に耳を傾けず、彼女を育児ノイローゼにまで追いやる。部下あるいは同僚を無視して、出社拒否・退社に追い込む。モラハラによる深刻な事態を防ぐために、夫婦で、あるいは会社ぐるみで本書をテキストにして話しあう機会をもってみられてはいかがでしょうか。

(哉)

今月の気になる本

新 自分を磨く方法 2007年02月

 スティービー・クレオ・ダービック 著
干場弓子 訳
ディスカバー・トゥエンティワン 発行

 書店や図書館に行けば膨大な数の自己啓発関係の書籍を見ることができるし、会社の費用でその手のセミナーに参加できる可能性もある。自分を深め、仕事に必要な技術を高めていくためには、いろいろな本を読み、さまざまな人々と接して人のやり方を吸収していかなければならないわけだが、その第一歩として、本書は最適だ。
 また、新入ばかりでなく、すでに社会に出て自分のキャリアを築きつつあるベテラン、あるいは躓いて少し落ち込んでいる人にとっても、本書の力に満ちた、それでいて包み込むようにやさしい文章に触れれば、生きていく勇気が湧いてくるだろう。
 頑張ることばかりが重要だと一概にいうことはできないが、泣いても笑っても自分で自分の人生を背負って生きていかなければならないわけで、充実した人生を送りたいならば自分を磨く努力は必要だ。自分磨きのレシピがここにある。

(哉)

 哉の店長イチオシ
この春社会に飛び出す若者に最適な1冊!
生きテクマニュアルなのだ!

今月の気になる本