キッズ・オールライト 2011年07月

【監督】リサ・チョロデンコ
【出演】アネット・ベニング、ジュリアン・ムーア

 南カリフォルニアのとある中流家庭。大学進学も近い姉のジョニとその弟レイザーは前から気になっていたことを親に内緒で実行する。彼らの“遺伝子上の父親“と初めて会うのだ。実は二人の母親たちは同性愛カップルで精子バンクの提供で各々子供を生んでいた。反対した親たちも一同食卓を囲むことになるのだが…。原題”Kids are all right”は「子供たちは大丈夫」という意味なので思春期の子供たちの悩みの話、と思わせておいて悩める大人たちのドラマでもありました。キャラクターの描き方が冴えている。精子提供者のポールは独身主義だが思わぬ「子供」の出現に急に家族がほしくなる。息子親のジュールスは夢見がちで無職、主婦の役割が不満で外からきたポールが輝いてみえる。娘親のニックは医師で口やかましい家長、ポールを侵入者とみて遠ざける。憧れと嫉妬そして理想と現実の間でこっけいなほど右往左往する大人たち(結構いい年)が大人げなくも愛おしい。カリフォルニアワインにオーガニック食そして青い空のおかげかドロっとした内容にならず不思議とさわやか。二人のママを演じるアカデミー賞常連女優の倦怠期カップルが流石のうまさなのです。(neo)

キネマ見ましょか

ブラック・スワン 2011年06月

【監督】ダーレン・アロノフスキー
【出演】ナタリー・ポートマン

 白鳥は優雅に水面を泳いでいるけど水面下では必死に足をばたつかせている。立派な人間はたゆまぬ努力をするという喩えだが。今回思わず思い出した。ニューヨークのバレエ団で踊るニナは母親の過剰な愛情で育った生真面目な女性。そんな彼女にプリマの夢が。「白鳥の湖」で清純で優雅な“白鳥”そして邪悪で情熱的な“黒鳥(ブラックスワン)”の二役を演じるのだ。しかし技術的に優れていてもパッションに欠けるダンスでは黒鳥は無理だといわれる。新入りのダンサーリリーは、ニナとは正反対に自由奔放に自分を曝け出す。最初は無視しようとするが…。 この映画が面白いのは色んな見方ができること。世間知らずの女性がプレッシャーから狂気の世界に入るホラーともとれるし、究極の目標にむかって走るスポーツ(根性)映画としてみてもいい。(実際バレエって足の格闘技という感じがすごくしました!)私は成長物語とみました。母に抑圧された女子が急に恋や友情を浴びせられ遅い反抗期をむかえ大人になる…というプロセスが極端に痛々しい形になったそんなお話。演じるナタリー・ポートマンの怯えぶり、最後の驚愕のはじけっぷりにオスカー女優の才能と根性をみました、凄い!(neo)

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英国王のスピーチ 2011年03月

【監督】トム・フーパー
【出演】コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ 

 実話からの映画化。後のジョージ6世はスピーチが大の苦手。吃音というハンディキャップがあったのだ。夫人の勧めで会ったオーストラリア人の言語治療士は変わり者で自分を王族とも思わないフランクな態度に腹をたてつつもそのユニークな治療に従ってゆく。それはつらかった子供時代の記憶を癒すプロセスでもあった。しかし最大の試練が。後継者であった兄が王位を放棄、国を代表する「声」の役目を自分が行わなければならない…!! 王室のファンでもなくイギリス好きな人間でもないので敬遠する題材ですが、見てみると目からウロコ。歴史物にありがちな固さがなくたまたま「王」という仕事につく羽目になったネガティヴな男の成長記に仕立ててあるところが素敵です。当時最先端のメディアであったラジオの舞台裏でのクライマックス、おかしさと感動がないまぜになった展開は巧い!の一言。前作ではゲイの大学教授を好演したコリン・ファースの品のある演技と芸達者なジェフリー・ラッシュがオスカー候補なのも納得ですが、個人的には夫人役のヘレナ・ボナム=カーターが◎。ティム・バートン映画のエキセントリックなキャラとは違ったクラシックな味わいが良いです。(neo)

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冬の小鳥 2011年02月

【監督】ウニー・ルコント
【出演】キム・セロン、ソル・ギョング 

 子供のころ転校生に出会うとどぎまぎしたものだった。せいぜい半径2、3キロの世界しか知らない自分からみれば未知の土地からやってきた彼らはそれだけでただ者ではなかった。親の都合で連れてこられ、知らない人間たちの中に放り込まれるなんて嫌だなあ、自分でなく良かったとも。気のせいか彼らは大人びてみえた…長いこと忘れていた感覚を思いだしたのはこの映画をみたからだ。
 70年代の韓国、最愛の父に養護施設に預けられ「捨てられた」9歳のジニ。必ず父が迎えにくると信じ周囲になじもうとしない。でもおのずと現実が目に入ってくる。障害があるため恋もままならず追い立てられるように外の社会に出てゆく者。あるいは豊かな外国の養子になろうと懸命に英語を覚え己をアピールする者。孤児たちそれぞれの思いが交錯する中、ジニも自分の“未来”を選択しようとする。韓国原題は「旅人」。そう、状況のハードさの違いこそあれ彼らも旅人だったのだ。来たことは変えられなくてもどう生きてゆくかは自分次第なのだ。ふと、恥ずかしくなる。ああ自分は成長していないなぁ。ちゃんと未来を選択して自分の足で歩んでいるのだろうか…。(neo)

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バーレスク 2011年01月

【監督】スティーヴン・アンティン
【出演】クリスティーナ・アギレラ、シェール 

 なんとも冷え込む毎日。こんなときはほのぼのと暖かく~ではなく、かっと熱く“華”のある映画がみたいものです。広島の話題スポットになった福屋上の新映画館・八丁座にて『バーレスク』を観てきました。
 田舎から夢だけ抱えてロサンゼルスに出てきたアリは連夜ショーが繰り広げられるバーレスク・クラブでウェイトレスとして働く。彼女の願いは舞台で歌い踊ること。でも元ダンサーで美貌のオーナー・テスは易々とは認めない。一か八かステージに立ったアリ。その一声にみんなが釘づけになり、店のトップスターへ大変身。明るい未来が開けたと思った矢先…! ひたすら前へ進む若いアリと甘いも苦いも噛み分けた大人の女テス、対照的だけどどこか似ている二人をグラミー賞常連のアギレラとベテランのシェールが演じるキャストに★二つ。アギレラの骨のある歌いっぷりはCDで聞いていたより数倍いい感じです。「バーレスク」とはストリップまでいかない、寸止め色気が命の大人向けのショーだとか。そうそう、このモロ“洋”な映画が八丁座の“和”な空間と不思議に合うんですな。座り心地良いイスの上で2時間弱、寒さ忘れるひとときでした。(neo)

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ぼくのエリ200歳の少女 2010年12月

【監督】トーマス・アルフレッドソン
【出演】カーレ・ヘーデブラント、リーナ・レアンデション 

  静謐…そんな単語があるのを思いだすほどに静かなオープニングに心うばわれる。長く暗い北欧の冬にしんしんと雪がふる中、出会いと惨劇がはじまる。12歳のオスカーは学校で陰湿ないじめをうける友達のいない孤独な少年。ある日隣の部屋に越してきた美少女エリに心ひかれるが、いきなり友達になるのを拒絶される。それでも謎めいた彼女への興味をおさえきれない。そして町では猟奇殺人がおきる…エリは永遠に12歳のままのヴァンパイアだった!
 徹底して“少年”目線でみた世界感が異色で出色。吸血鬼ものなのでホラーシーンや流血もありますが、オスカーにとって苛めっ子たちの暴力の方がはるかに怖い。生理的な好き嫌いでつきすすむ子供の残酷さに、思わず自分の過去をふりかえりぞっとする人も多いのでは。社会やモラルに縛られない人間でないエリに(こそ)心をひらくことが自然に納得できてしまう、演出のうまさが光ります。それぞれ孤独を抱え込む二人が壁をたたきモールス信号で「会話」するシーンに切なくもほっとさせられますが、果たして二人に幸せはあるのか? 不気味な伏線もあり一筋縄ではいかない余韻のある映画です。(neo)

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十三人の刺客(2010年版) 2010年11月

【監督】三池崇
【出演】役所広司、稲垣吾郎、松方弘樹 

 江戸の終わり頃、将軍の弟で異常なまでの残虐さで知られた明石藩主松平斉韶。法で裁けないこの男を暗殺すべく12人の武士たちが集められ参勤交代の途上を狙う。さらに1人が加わり道筋の宿場を決戦の場所にするが!
 劇場に入るとカップル(稲垣吾郎めあて?)とかなり年齢上のカップル&おじさん組(時代劇好き?)で結構にぎやか、老若男女の混ざり具合がいい感じ。三池崇監督のエログロ趣味が果たしてどうなのか、というのはありますが(年配の人が割に平気で、逆に若者の方が引いていたのが可笑しかった)、前半の頭脳戦とクライマックスの1時間近い大殺陣(たて)も見応えあり。稲垣の悪殿も頑張って?いたのではと思うのです。 で、これはリメイク。オリジナルは1963年東映で作られた白黒映画で今回と基本ラインは同じ。“集団抗争時代劇”とも言われ、カッコをつけない斬り合いとかリアルさが画期的だったのです。するとこの映画の面白さはもとの脚本の良さなんだと気づきます。個人的には同時上映で新旧あわせて大スクリーンで見たかったなあ… (neo)

キネマ見ましょか

ミックマック 2010年10月

【監督】ジャン=ピエール・ジュネ
【出演】ダニー・ブーン、ジュリー・フェリエ 

  毎年フラワーフェスティバルの頃に出現する「お化け屋敷」、入ったことありますか? いつも気になりつつ横目で通りすぎるのですが、あるだけでホッとするのです。きれい明るいが当たり前になってますがドロッとゴチャッとしたものがないと味気ないです(よね…?)。
 バジルは、父親を地雷で亡くして孤児に、大人になったら銃弾が頭に入ってホームレスに。こんな原因をつくった兵器会社に“復讐”しようとする…と書くと重たげですが、本人に悲壮感がなく「困った~」という感じなのが良いです(笑)。復讐といっても手段が「ミックマック」(フランス語で悪戯)、あの「アメリ」の監督ですから。仲間になるのが“軟体女”“人間計算機”“人間大砲”とほとんどサーカスです。一芸に秀でているけど社会からずれた連中が大会社をいかにギャフンといわせるかが見どころ。ありえない~けどお祭り騒ぎの楽しさがたまらない。 (neo)

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キャタピラー 2010年09月

【監督】若松孝二
【出演】寺島しのぶ  大西信満 

 やはり寺島しのぶさんが強烈だった。戦場で手足をなくし芋虫のようになった夫に最初はただ恐れ従うだけ。やがて軍神の妻を演じる旨味も知り、村人から尊敬されるのを楽しみさえする。ただ、可哀相な戦争の被害者だけでなく、もっと狡猾にしたたかに生きぬこうとした庶民を、寺島さんがものすごい説得力でみせてくれた。その姿は美しくはないがリアルだし今生きる自分たちもその一員なのだ。
 対照的に、美しい日本の農村というコトバがぴったりくるのどかな風景。かつて当たり前のようにあったこの国の村々が当たり前のように戦争とくっついていた、その事実の重さ哀しさが実は一番衝撃だった。国際映画祭での受賞などセンセーショナルな話題以外でも観てほしい一本でした。 (NEO)

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インセプション 2010年08月

【監督】クリストファー・ノーラン
【出演】レオナルド・デカプリオ  渡辺 謙

 他人の夢の話を聞くのはつまらない。少しも興味がわかないのだ。それは分かっているのに自分が見た夢は誰かに話したくなる。けれどその面白さは決して相手に伝わることはない。夢というファイルを開くことが出来るシステムは、見た者の頭の中にしか備わっていないようだ。
 この物語の主人公はそのシステムに侵入するハッカーだ。他人の夢に入り込み、潜在意識の中でその人間を操作しようとする。しかし皮肉なことに、侵入者である彼自身の潜在意識がその計画の邪魔をする。奇妙なバランスの風景や浮遊感でリアルに(?)創り出された夢の中の世界は、メビウスの輪の上に作られた迷路のような空間。そこから主人公は生還することが出来るのだろうか?居眠りして夢に侵入されないように注意して見守っていよう。
(nao)

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