| 海角七号 君想う、国境の南 | 2010年03月 |
【監督】魏徳聖(ウェイ・ダーション)
【出演】范逸臣(ファン・イーチェン) 田中千絵 中 孝介
1940年代の台湾、伝えることの出来なかった想いを込めた手紙が国境を越えました。時が経ち再び国境を超え21世紀の街に帰ってきた手紙を手にしたのは一人の青年。彼は都会で果たせなかったミュージシャンとしての夢を胸にしまい込んで、不機嫌に故郷で暮らしていました。
やがて青年は心ならずも一度は捨てたギターを抱えます。地元のイベントのために結成されたバンドは寄せ集め、その上世話をする日本人女性は超高飛車・・・いらいらする彼ですが、あの手紙に見守られるように心が少しずつほぐれていきます。楽しい青春映画に、海風のように遠い日の記憶が香ります。手紙が届くべきひとに届く感動よりも、過去と現在は様々なひとの想いが重なり合いながら繋がっている、ということへのいとおしさを感じる映画でした。(nao)
| アバター | 2010年02月 |
【監督】ジェームズ・キャメロン
【出演】シガニー・ウィーバー ゾーイ・サルダナ サム・ワーシントン
初めての映画を見るたびに、スクリーンを通して今まで気付かなかったものの見方や、予想もしない創造物などに出会うことは新鮮な楽しみです。この映画は、3Dという映像技術でその楽しみを与えてくれました。
パンドラという星で秩序を保って生活を送っているナヴィ達は、貴重な鉱物資源の採掘を目論む地球人によって危機にさらされています。パンドラに乗り込んだ地球人のアバター達はこの星を破滅させてしまうのでしょうか。
美しい青空、緑の樹々、澄んだ水のパンドラの風景は立体映像によって本物の景色のように目の前に広がります。しかし映画の中の地球は、そんな自然の風景を失ってしまった星として描かれています。美しい風景は3D眼鏡をかけなければ見ることができない星では、映画の楽しみも無くなってしまうことでしょう。
| ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない | 2010年01月 |
【監督】佐藤祐市
【監督】小池徹平/品川祐
久々に泣いて笑って清々しい気分になれる映画を見た。まずタイトルからしてインパクトがある。これだけでなんだか過酷で辛い状況が伺える。今この大不況の中、ブラック会社と呼ばれる会社がいくつあるのだろうか?この映画ほどではなくとも、近い状況の中どれだけの人たちが自分の限界に挑戦し、必死に毎日を這い上がっているのか…。
働かずして暮らせたらなんて誰しも一度は考えるだろう。しかし私達の生活は生きる事こそが、働く事であり、働く人々は戦士と化して毎日、戦場に出て様々な課題に奮闘している。そこは1人ではない、たくさんの仲間達がいる。時には衝突したり、話し合ったりしながら絆を深めている。そして過酷な状況に陥った時こそ皆、自分自身の中で限界を位置づけているのではないだろうか。では限界の先には何があるのか、それを越えた者だけが体験できる、自信と達成感に溢れ成長した自分に出会えるのではないだろうか。(B)
| 正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官 | 2009年12月 |
【監督】ウェイ・クラマー
【監督】ハリソン・フォード、レイ・リオッタ、アシュレイ・ジャッド、ジム・スタージェス
アメリカ合衆国は移民の国、という。これを理解しておくことが小説や映画を鑑賞する上で重要だという。しかし一つの国に多くの民族が存在しているという状況を、日本に住む日本人の私は実感することができない。それどころか、日本人であることがどういうことなのか、把握することもできない。
この映画の中で移民局のベテラン捜査官が見つめる一人ひとりの物語は、数枚の書類で片付けるには重過ぎるものだろう。1枚のグリーンカードのために多くの涙や血が流され、嘘や裏切りや二度と会えない別れが生まれる。中には要領よく規制をすり抜ける者もいるが、不法滞在者と呼ばれる彼らはみな、自分と祖国とのあり方を強く想っている。ここで示されているのは、遠い国の流浪の民の事情ではない。「この国に住むこの国の自分」を捉えることのできない私のような者に、国境を越える足の重さを刻み込む楔である。(nao)
| ウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢 | 2009年11月 |
【監督・脚本・原作】ニック・パーク
W&G最新作はシリーズ初の殺人事件。連続殺人鬼の次の標的は、西ワラビー通りでパン屋を営むウォレスのようです。迫り来る危機に気付かないで相変わらず目をハートにしているウォレスに、グルミットは気が気ではありません。彼は相棒を守ることができるのでしょうか。そしてこれもシリーズ初、グルミットの初恋の行方は・・・?
新作の公開は、これまでのテレビシリーズの作品と同時上映になっています。技術の進歩で登場人(犬)物のお肌はつやつやになっていますが、随所にパロディなどの小技を散りばめた楽しい物語の精神は変わることはありません。この最強のコンビはこれからも素敵な冒険を繰り広げてくれることでしょう。ひとつ願うとすれば、自作は死人の出ないミステリーであったらいいなと思います。W&Gにはハッピーな大事件で活躍してほしいですから。(nao)
| ローマの休日 | 2009年10月 |
【監督】ウィリアム・ワイラー
【出演】オードリー・ヘップバーン グレゴリー・ペック
自由のない暮らしに嫌気がさし、私は、ある晩、出張先の宿泊施設から脱け出しました。そして、公園のベンチで眠り込んでいると、知らない男性が心配して、彼の家に連れて行ってくれたのです。翌日は、まず美容室で髪をばっさり切って大変身。そのあと、スクーターに乗ったり、アイスクリームを食べたり、ライオンに噛み付かれそうになったり…。初めての経験ばかりで、すごく楽しかったです。彼の友だちもやってきました。夕方からはダンスパーティに行きました。美容室のおじさんの招待です。
楽しい一日も終わるという頃、急に仕事のことが心配になりだしました。なので、好きになりかけていた彼とは、やはり、お別れすることにしました。
二、三日して、大勢の記者に囲まれてインタビューを受けていると、あの彼もその中にいて、驚きました。彼の友だちもいっしょで、記念にライターをくれました。超小型のカメラも入っている多機能なグッズで、今でも愛用しています。
今まで行った所で一番印象に残っているのはどこか、と尋ねられたので、「世界には色々良いところがあるけれど、一番気に入ったのは、なんといってもここ、ローマです」と答えたら、みんなびっくりしていました。ここ数日、表向きには、私は体調を崩して寝ているってことにしてあったものですから。それにしても、今振り返ってみると、楽しいことや苦い別れを経験して、私は子供から大人に変身できたような気がします。 (amo)
| ショーシャンクの空に | 2009年09月 |
【監督】フランク・ダラボン
【出演】ティム・ロビンス モーガン・フリーマン
真面目に生きてきた主人公、アンディが身に覚えのない罪で刑務所に服役させられる。その過酷な運命と闘いながらも希望を捨てず最後には脱走をはかる。刑務所内部の様々な裏事情と、人の心の奥底に潜む残酷さが浮き彫りにされ、凄くリアリティがあった。その中でも親友のような関係を築けた囚人との出会いがあったり、刑務所内の環境改善に取り組んだ事で他囚人からの信頼を高めていく。
そして遂に大嵐の日に下水管に潜り込んでまで得た自由。
この主人公は周辺の人々に勇気と希望を与え、仲間を励まし、常に考え、最後まで希望を捨てない。その強さに私は深く感動した。これまでの人生の中で一番良かったと思える作品である。
ラストにアンディが得た自由を現すような海のシーンはとても壮大に見え、今でも鮮明に思い出される。
(B)
| 重力ピエロ | 2009年08月 |
【監督】森 淳一
【出演】加瀬亮,岡田将生,小日向文世,鈴木京香
美しい母と賢明な父、仲の良い兄弟。家族には残酷な出来事が起こっている。消せない過去をそれぞれが抱えて年を重ね、母は美しいまま亡くなり、父もその時を静かに迎えようとしている。息子たちはひとつの事件を追いながら、自らの結論に向かって進んでいく。
破壊と暴力に囲まれてそれを乗り越えるには、強い意志と身体の力が必要だと思う。この家族にはそれがある。しかしもうひとつの力を持っている。重力など無いもののように軽々と笑う力、それがこの映画のタイトルなのだと思う。
これは現代に舞い降りた聖家族の物語だと思った。美しい母と賢明な父、仲の良い兄弟。彼らの足元は地面から離れ、天に遊んでいるのではないか。たくさんの血を流しながら、それでも心から笑いながら手を繋いで舞っているのではないか。
(nao)
| 映画「ミツバチの羽音と地球の回転」ビデオレター | 2009年07月 |
【監督】鎌中ひとみ【出演】グループ現代
地球温暖化の問題がクローズアップされている。地球が生き延びていくために人類はどのような電力を得てゆけばよいのだろうか。そんな問題に取り組んでいる映画「ミツバチの羽音と地球の回転」の制作の途中の報告として作成されたビデオ。5月30日、広島市中区のヲルガン座という音楽喫茶で、監督の鎌中ひとみさんと祝島の方々を迎えて上映された。
原発問題で揺れている山口県上関町の沖に浮かぶ『祝島』が主な舞台。海の美しい、楽園のような島だ。月夜の晩の波打ち際では、蟹が産卵する。みごとな鯛や鮹などに代表される極上の水産資源に恵まれている。しかし、上関町に原子力発電所ができれば、水温が上昇し、魚類への影響はまぬがれないという。もしも原発事故が発生したら島は死の島と化してしまうだろう。
美しい環境を守るために、島の人たちは途絶えていた伝統行事-管弦祭にも似た海と船と人が主役の祭り-を復活させ、盛り上げていくことを選択する。それが祝島の人たちなりの原発反対運動になるのだと信じて。
(amo)
| スラムドッグ$ミリオネア | 2009年05月 |
【監督】ダニー・ボイル 【出演】デーブ・パテル、フリーダ・ピント
オバマ大統領はこの映画を大絶賛した。YES WE CAN. 野良犬のような人生でもCHANGEできるというジョークだろうか。スラム街に生まれた主人公がクイズ番組に出演して、大金と初恋の女性を手に入れる物語である。クイズの答えは彼のこれまでの人生の中にあった。貧しくて傷だらけの年月も無駄なものではなかったのだ。 ボイル監督の映画は、感覚がざわざわするような不穏な雰囲気を持っている。この作品も雰囲気はそのまま、それを夢物語に紡ぎハッピーエンドにする強引さでさらに不穏さを倍増している。現実ではこんなことはあり得ないけど始めた人生を降りる訳にはいかない、まぁ頑張ろうぜ、とでもいうような最後のダンスシーンですっかり転がされてしまった。でも後味は悪くない。監督のファイナル・アンサーは大正解である。
(amo)



