ショーシャンクの空に 2009年09月

【監督】フランク・ダラボン
【出演】ティム・ロビンス モーガン・フリーマン

 真面目に生きてきた主人公、アンディが身に覚えのない罪で刑務所に服役させられる。その過酷な運命と闘いながらも希望を捨てず最後には脱走をはかる。刑務所内部の様々な裏事情と、人の心の奥底に潜む残酷さが浮き彫りにされ、凄くリアリティがあった。その中でも親友のような関係を築けた囚人との出会いがあったり、刑務所内の環境改善に取り組んだ事で他囚人からの信頼を高めていく。
 そして遂に大嵐の日に下水管に潜り込んでまで得た自由。
 この主人公は周辺の人々に勇気と希望を与え、仲間を励まし、常に考え、最後まで希望を捨てない。その強さに私は深く感動した。これまでの人生の中で一番良かったと思える作品である。
 ラストにアンディが得た自由を現すような海のシーンはとても壮大に見え、今でも鮮明に思い出される。 

 (B)

キネマ見ましょか

重力ピエロ 2009年08月

【監督】森 淳一
【出演】加瀬亮,岡田将生,小日向文世,鈴木京香

  美しい母と賢明な父、仲の良い兄弟。家族には残酷な出来事が起こっている。消せない過去をそれぞれが抱えて年を重ね、母は美しいまま亡くなり、父もその時を静かに迎えようとしている。息子たちはひとつの事件を追いながら、自らの結論に向かって進んでいく。
 破壊と暴力に囲まれてそれを乗り越えるには、強い意志と身体の力が必要だと思う。この家族にはそれがある。しかしもうひとつの力を持っている。重力など無いもののように軽々と笑う力、それがこの映画のタイトルなのだと思う。
 これは現代に舞い降りた聖家族の物語だと思った。美しい母と賢明な父、仲の良い兄弟。彼らの足元は地面から離れ、天に遊んでいるのではないか。たくさんの血を流しながら、それでも心から笑いながら手を繋いで舞っているのではないか。 

 (nao)

キネマ見ましょか

映画「ミツバチの羽音と地球の回転」ビデオレター 2009年07月

【監督】鎌中ひとみ【出演】グループ現代

 地球温暖化の問題がクローズアップされている。地球が生き延びていくために人類はどのような電力を得てゆけばよいのだろうか。そんな問題に取り組んでいる映画「ミツバチの羽音と地球の回転」の制作の途中の報告として作成されたビデオ。5月30日、広島市中区のヲルガン座という音楽喫茶で、監督の鎌中ひとみさんと祝島の方々を迎えて上映された。
 原発問題で揺れている山口県上関町の沖に浮かぶ『祝島』が主な舞台。海の美しい、楽園のような島だ。月夜の晩の波打ち際では、蟹が産卵する。みごとな鯛や鮹などに代表される極上の水産資源に恵まれている。しかし、上関町に原子力発電所ができれば、水温が上昇し、魚類への影響はまぬがれないという。もしも原発事故が発生したら島は死の島と化してしまうだろう。
 美しい環境を守るために、島の人たちは途絶えていた伝統行事-管弦祭にも似た海と船と人が主役の祭り-を復活させ、盛り上げていくことを選択する。それが祝島の人たちなりの原発反対運動になるのだと信じて。

 (amo)

キネマ見ましょか

スラムドッグ$ミリオネア 2009年05月

【監督】ダニー・ボイル 【出演】デーブ・パテル、フリーダ・ピント

 オバマ大統領はこの映画を大絶賛した。YES WE CAN. 野良犬のような人生でもCHANGEできるというジョークだろうか。スラム街に生まれた主人公がクイズ番組に出演して、大金と初恋の女性を手に入れる物語である。クイズの答えは彼のこれまでの人生の中にあった。貧しくて傷だらけの年月も無駄なものではなかったのだ。  ボイル監督の映画は、感覚がざわざわするような不穏な雰囲気を持っている。この作品も雰囲気はそのまま、それを夢物語に紡ぎハッピーエンドにする強引さでさらに不穏さを倍増している。現実ではこんなことはあり得ないけど始めた人生を降りる訳にはいかない、まぁ頑張ろうぜ、とでもいうような最後のダンスシーンですっかり転がされてしまった。でも後味は悪くない。監督のファイナル・アンサーは大正解である。 

 (amo)

キネマ見ましょか

Geno 2009年04月

【出演】 デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズ

 このコラムの主筆のnaoさんに代わってamoが代打で登場。でも何書こう?最近、映画、観てない…。苦し紛れになるかもしれないけど、iTunes Storeで購入した懐かしいミュージックビデオを紹介します。  デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズは、1980年頃活躍したイギリスのバンド。「カモン・アイリーン」という曲が代表曲。初めて耳にしたとき、その楽しい曲に驚き、曲の途中からエアチェックしたのを覚えています。  ところで、この「Geno」というビデオは、同名の曲(ブラスバンドを取り入れたロック)の演奏シーンと演奏会場に向かうメンバーの姿を交互に映し出したものです。会場に向かう彼らの姿がじつにカッコ良い。黒い革ジャンに細身のズボンを穿き、少しツッパって、少し気取った青年たちが、田舎町の坂道を黙々と下って駅に向かい、街に出てくる。そこら辺の人たちにはわからないかもしれないけど、オレたちってすごいんだぞ感がプンプンしていて、かわいい。  曲の内容については、英語が苦手なamoにはわかりませんが、たぶん「やっぱりオレたちってすごいんだぞ」って言っているような気がします。

 (amo)

キネマ見ましょか

藝州かやぶき紀行 2009年03月

【監督】 青原さとし
【出演】 かやぶき職人のみなさん

 郷土出身の監督が広島県の農村を主要な舞台として描いているので、訪れたことのある景色も登場して親近感を抱いたが、そこで営まれている生活についてはほとんど知らない。特にかやぶき職人の仕事など、この映画を見なかったら一生知らずに終わってしまうような気がする。 土地の気候風土によってもかやぶきで使われる道具が違うらしい。気候が温和で雪の少ない山陽側では、かやぶきの屋根のかやも薄く、職人たちは短い「かまばり」という道具を使って屋根をふく。雪が多く、かやの厚みも分厚い山間部では、長いかまを使用する。道具や作業方法の違いには理由があるということが、丹念に作業の様子を追ってゆく映像と、監督自身のナレーションで、よく理解できた。 最も心を打たれたのは、職人たちの経験に裏付けられた自信に満ちた言葉だ。彼らが掌を見せるシーンが何度かある。長年の仕事で節くれ立った手。果たして自分は彼らのように「俺の手を見ろ」と人前に掲げる勇気はあるだろうか。正直なところ、その自信は、まだない。

 (amo)

キネマ見ましょか

チェ 28歳の革命 2009年02月

【監督】スティーヴン・ソダーバーグ
【出演】ベネチオ・デル・トロ、デミアン・ビチル

 1枚の写真を見ている。チェ・ゲバラが広島市の原爆慰霊碑の前に立っている。本作で描かれたキューバ革命の勝利宣言から半年後の1959年7月、永遠の戦士はこの場所を訪れた。
 裕福な家庭に生まれて頭脳も明晰なゲバラは、祖国で貧困にも革命にも縁のない豊かな暮らしをおくることもできただろう。しかし彼は常に「現場」に足を運び続けた。23歳の時にバイクで南米を旅し、28歳でキューバの革命軍を率い、39歳にボリビアで亡くなったアルゼンチン人チェ。彼の人生の三つの場面を、私たちは映画を通して観ることができる。そして映画に描かれなかった時間も彼の足は止まらなかったことをこの写真は語っている。感謝したいような気持ちになる「チェ 31歳のヒロシマ」である。  

 (nao)

キネマ見ましょか

シャイン・ア・ライト 2009年01月

【監修】マーティン・スコセッシ
【出演】ジム・スタージェス、エヴァン・レイチェル・ウッド

 このコラムを読んでいただいている方ならまたか!と思われるかもしれませんが、素敵なロック映画を見て来ました。昨今、たいていのコンサート映像なら、YouTubeで浴びるほど見ることが出来ます。しかしさすがスコセッシ監督、四人の演奏風景をただ撮っただけではありません。本番に至る緊張感や若い頃のメンバーを映すフィルム(「60歳を過ぎても、もちろん歌ってるさ!」)が過剰になることなく配されて、ステージの迫力をいっそう高めます。見終わった後の満足感は、生のコンサートに劣るものではありませんでした。
 スコセッシ監督66歳、ストーンズ平均64歳、そして観客nao.○歳。中高年の、中高年による、中高年のための映像…あなたは綾小路きみまろですか?私はKeep On Rollin’です。

 (nao)

キネマ見ましょか

『空白の天気図』『広島の四季』 2008年12月

【空白の天気図】柳田邦男 監修
広島気象台・広島平和文化センター製作

【広島の四季】広島市 製作

 「空白の天気図」は、先月のこのインフォメーションの裏面「舟入散歩」でも紹介した、柳田邦男著の同名の小説を映像化した作品。被爆当時の江波山の気象台で「欠測なし」の観測作業を続け、被爆状況の調査に取り組んだ台員たちの姿を描く。約13分のビデオだが、原作のポイントがうまくダイジェストされている。
「広島の四季」は、タイトル通り広島の四季を代表する風景が美しい音楽とともに5分間、スライドショーのように映し出される作品。地元の者にはおなじみ風景だが、来広された外国の人に広島の風物詩を紹介するとき格好の手引きとなるのではないだろうかと思った。
 二本とも広島江波山気象館のビデオルームで鑑賞することができる。

 (哉)

キネマ見ましょか

アクロス・ザ・ユニバース 2008年11月

【監督】ジェリー・テイモア

【出演】ジム・スタージェス、エヴァン・レイチェル・ウッド

 ザ・ビートルズの曲を30曲以上使ったミュージカルです。でも曲だけではなく登場人物の名前も、台詞に挟まれる言葉にも、そして小道具にまでもビートルズが溢れています。リヴァプール生まれの主人公ジュードが、ニューヨークに渡って見つけた恋と友情とサムシング。愛しいひととのすれ違いや世の中の大きな動きの中で「誰にも何にも僕は変えられない」と歌うジュードの長く曲がりくねった道はどこに続いているのでしょうか…。
 時に荒々しく、時に幻想的な映像は1960年代という時代を感じさせるとともに、立ち止まっては途方にくれる若い日々の切なさを思い出させます。この映画はきっと、4人の音楽を持つ世界に生きているあなたや私の物語でもあるに違いありません。

 (nao)

キネマ見ましょか