「人の心にタネを植えよう」
―公共広告機構のCMから
最近、民放テレビのCMに流れるキャッチフレーズである。荒廃する社会に命の大切さと人間愛を訴える言葉。まさに人間社会での「啓蒙的標語」といえよう。
同機構の発案に民法各社が無償で協力、三十秒、六十秒の二本のCMを全国のお茶の間に流しているそうだ。
この言葉の字義ではタネならば蒔く。苗木なら植える(じゃがいもの場合はタネいもを植えるともいうけれど…)であるが、些細な字義の講釈を云々するのではない。
要するに、人の心のなかにタネからの発芽を、苗木から大きな樹木を、そだてる豊かな情愛とその喜びを通して命の大切さを訴えようというCM企画。とかく民法メディアのあり方が論議されるなか、民放の志向する一端のCMである。
四月の言葉としてとりあげたのは、新しく進学、社会人になった人たちへの餞(はなむけ)である。新しい環境のなかでさまざまな「出会い」から新しい人間関係が生れる。そのなかでお互いが、相手を認めあうこと、友情をはぐくむことの大切さを示唆する言葉でもあろう。
四月は若葉燃え立つ五月への序曲。生命の息吹を実感できる季節。タネ蒔きの時期で、地方によっては苗代の作業を始める土地もあるし、夏・秋に花を咲かせるためのタネを蒔く。近年は、農業・園芸技術の進歩により変化がある。が、タネ蒔きは、歳時記の季語では「春」。
俳人・星野立子の句に―
「きらきらと輝く種を蒔きにけり」
また同じ俳人・岡安迷子の句には―
「花種を蒔かんとすれば土笑みぬ」があり、ほのぼのとした印象的な句もある。人の心にタネを蒔いたり、植えたりする場合、相手の『心の土』をいかに耕し、柔らかい土壌にするかである。それは、やはり相手を思いやることで、「博愛」、「慈愛」の涵養につながる。
荒廃した社会の復興は、まず人の心の復興からだろう。
人に情けあり
情けに縋(すが)りて
人の縁(えにし)を悟る
この三行詩には、人と人との「出会い」の絆を説いたもの。人の絆は心の絆―。
(風彦)