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今月の言葉(2月)

「春望」賦は、故郷への賛歌

――風彦 

「春望」―。広辞苑、大辞林、新明解の辞書には、この言葉の漢字は記載されていない。
 「望春」、という字をひいても漢字はなかった。「迎春」とは、新しい春を迎える、とあるが、漢字の持つ感じは少しばかり違う。「春望」・「望春」は、春を待ちわびる望郷賛歌でもある。
 この二月は、まさにそんな思いの季節であるが、「春望」という言葉には記憶があった。
 杜甫の有名な詩である。「国破れて山河在り/城春にして草木深し」(後略)ー。題名は「春望」。杜甫は唐時代李白と並び称された詩人。彼の詩と人となりについての『故事来歴』は割愛しよう。
 日本人ならずとも詩人のこころには、「ふるさと」への思いー望郷の念がある。
 ある日、ある時、広島市内の寺町通りと城南通りの四つ辻近くの一隅にある知り合いの「あったかぽけっと」という名のお店を訪ねた。自然食品、健康食品などを扱っている看板通りの『あったかな』心の持ち主の主婦の店。そこで尋ねられたのは、高野辰之という人の名前だった。恥ずかしながら思い当たらなかった。
 長野県信州中野出身の詩人。名前こそ知らなかったが、この人の作品は知っていた。「春が来た」「春の小川」「故郷」「朧月夜」「紅葉」…。小学時代の音楽の時間で習い、歌った唱歌の名作ばかり。昭和時代の日本人なら誰でも歌っている。が、作者については、教えられていなかった。
 改めて詩人・高野辰之の存在を認識、人となりを学んだ。長野師範から東京音楽学校へ、のちに大正大学教授に。一連の唱歌、童謡はこの人の望郷の一念から生まれた。と同時に日本人の心の琴線にふれた作品であり、故郷の賛歌である。
 故郷は遠きにありて思うものーと詠んだ室生犀星の「小景異情」。石川啄木のーふるさとの/山に向かいて/言ふことなしーの詩もそうだ。
 また、この時期にふさわしい唱歌の「早春賦」。―春は名のみの/風の寒さや―(作詞 吉丸一昌)
 ―私は真っ赤なリンゴです―の「りんごかわいや」(作詞 武内俊子)の童謡も詩人の望郷から生まれた。
 「春望」「望春」は、日本人の心の遺伝子。そのふるさとは、いま疲弊。都会との生活格差を生じている。「ふるさと納税」なる税制が話題になるのも日本ならではの「故郷賛歌」かもしれない。

(風彦)

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2008年02月18日 17:11に投稿されたエントリーのページです。

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