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今月の言葉(3)

里山賛歌は日本人の精神文化の源泉

            ―風彦 

 日本語には季節への情感がある。そのなかで好きな言葉は「春めく」である。空のいろ雲のたたずまい、野も山も、草も木も鳥も…。森羅万象に萌えいずる若い生命を実感する。
 英語では「Spring like」といい、春めいた天気は「Venal weather」というそうだ。
 街の花屋さんには、ひとあしはやく色とりどりの春の花ばなが登場するが、やはり自然界、とりわけ山野の営みにみる「春めく」―四季の移ろいはたまらない。
 新幹線で何度か東京までの旅をしたが、この時期に車窓から眺める風景は、まさに「春めく」早春賦を楽しめる。小学時代に愛唱した「春が来た」「故郷」(ふるさと)「早春賦」などを心のなかで口ずさむ。里山で遊び惚けた時代を懐かしむ。広島に在住の詩人、松本暁子さんは、“里山讃歌の詩人”である。
 なかでも「春が来た」「春の小川」「故郷」「紅葉」などの作詞家で数々の小学唱歌の名作を生んだ高野辰之への思いが強い人で、彼の生まれ故郷の信州中野の知人との出会いから、現地に出かけて長編の詩を書いたほど。そのタイトルを迷ったすえにつけたのは「望郷賛歌」―詩人の心・高野辰之―であった。地元の人々からも愛詠されているそうだ。
 ちなみに、信州中野出身には、高野辰之、中山晋平の詩人のほかに、現在、作曲家で知られている久石譲さんもいる。彼らが育った山野の環境は、地元の誇りにもなっている。昨年、私も松本暁子さんの知人、小林基作さんから声を掛けてもらい信州中野をたずねた。
 農業、果樹園を営む小林基作さんは、有機栽培に生涯を傾ける“農業の哲人”であり、“土の詩人”でもあった。
 そしてこよなく里山を愛し、自然を讃歌する。信州中野の気候風土に育まれた人々の郷土愛が想像力となっていることを改めて認識した。―人生は創造から生まれる芸術―
 ここ最近、各地で荒廃した里山の自然環境の整備が行われており、里山の果たす人間社会の効用が論議されるまでになった。CO2の削減ばかりではないが、里山の醸し出す四季の移ろいは、日本人の情感を豊かに。精神文化の源泉でもある。
♪兎追いしかの山/小鮒釣りしかの川…(故郷)
♪春は名のみの/風の寒さや… (早春賦)
 現在の若者には、早春賦の歌詞が文語体で理解しにくいのだろう。が、私たち世代には懐かしい小学唱歌。日本の四季への讃歌である。
 ―環境が人を作り 環境はまた思想を生む―

(風彦)

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2010年03月01日 15:16に投稿されたエントリーのページです。

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